北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

続・週刊誌で読み解く,横綱日馬富士・暴行事件の深層(真相?)

 

(前回ブログ「週刊誌で読み解く,横綱日馬富士・暴行事件の深層(真相?)」のつづきです)

 

4.貴乃花は「勇み足」をしたという評価になるのか?

貴乃花の「謀略」説とか,「勇み足」説というのは,要するに,本件で,
貴乃花がモンゴル系力士や,八角理事長(元横綱・北勝海)を日本相撲協会から
「排除」する動機のもとに「やり過ぎた」という見解である。
この見解は,「週間新潮」の取材源となった関係者(主に相撲協会)の見解である
と同時に,そのような方向に世論を誘導しようとする勢力の存在・働きかけを窺わせる。
(モンゴルの世論・国民感情に適合的な見解でもある。)

この貴乃花「勇み足」説等の根拠となっているのが,
① 第1に,貴乃花が,10月29日,鳥取県警に提出した医師の診断書と,11月13日,相撲協会に提出した診断書の内容が異なっており,後者の方が,一見すると被害が重くに受け取れること(「#4 右中頭蓋底骨折,髄液漏の疑い」),
② 第2に,11月3日,相撲協会(危機管理部長・鏡山親方)の聞き取り調査に対し,貴乃花が「よく分からない」とすっとぼけたことが「騒動を大きくしようと意図」しているとの見方である。(いずれも,「週間新潮」が指摘するところで,後者(②)の方は,「相撲評論家の中澤潔氏」の見解による「権威づけ(?)」までしている。)

しかしながら,結論からいえば,上記見解は,いずれも「失当」である

まず,①の診断書の件は,第三者的立場にある医師が,精密検査をしたうえで,診断した内容であって,貴乃花が左右できる記載ではない。
②の「よく分からない」という惚け(とぼけ)も,相撲協会の介入を排除したいという
(貴乃花の)思いからは当然の対応であって「騒動を大きくしようと意図」など微塵もうかがわれない。

 推察するに,貴乃花としては,おそらくは,鳥取県警に「人気絶頂の」現役横綱を「加害者」(犯罪者)として「傷害罪」の被害届を出すことの社会的影響については,十分に承知しており,そのような「大それた」ことをすれば,相撲協会を敵に回すことになることも十分に承知しているはずである。そのような大それたことをする覚悟をするにあたっては,貴乃花としては,慎重を期して,側近の弁護士に相談したはずであり,「被害届」を鳥取県警に提出するに当たっても,顧問弁護士に相談したはずである。ちなみに,貴乃花に側近の弁護士がついているであろうことは,かつて,貴乃花が,「週間新潮」から「暴力団関係者との黒い交際」等を印象づける報道をされた件で,新潮社を被告として名誉毀損で訴え,最高裁まで争った経験があることからも自明であろう(1審・東京地裁平成21年2月43日判決[判例時報2033号]は,貴乃花を勝たせ,2審・東京高裁平成23年7月28日判決も,認容範囲を縮小したが,基本的には,貴乃花を勝たせている。ちなみに,弁護団には,先のコメントを寄せている落合元検事も入っている。)。
 そして,貴ノ岩をして提出させた被害届に「重み」をもたせ,鳥取県警による捜査を確実に実行させるためには,「権威づけ」に弁護士の代理人名義で届け出た可能性もある。
 
 このように,貴乃花が,自身の顧問弁護士に一連の対応を相談しているとなれば,
前記①②の対応は,至極もっともな対応であって,「正当な」対応とみて何ら不自然なところはない。この意味で,「週間新潮」の指摘は,全く当たらない。弁護士がついているならば,済生会福岡総合病院の2通目の診断書も,前医の診断書(1通目)=「現病歴」を踏まえてのものになるはずで,後医が,前医の診断と矛盾したり,誇張するような診断をするわけがない。何らかの「凶器」を使って,「頭部外傷(裂傷)」を生じさせたとなれば,それだけで十分に罪状としては重く,一大スキャンダルとなりうるものであるから,「枝葉の」部分で嘘偽りを診断する,あるいは診断を求める動機に欠けるのである。
 もとより,捜査の王道は,密行・潜行にあり,捜査が「表沙汰」になることは警察も嫌うところであって,相撲協会が「スキャンダル(内部不祥事)の握り潰し」を企図して,関係者に不正な働きかけをなす可能性を少しでも排除し,あるいはその介入を遅らせるために「すっとぼける」ことは,弁護士の指示としてもありうるところである。前回ブログの冒頭で紹介した貴乃花の「トンガった」態度は,弁護士の指示に基づく,自信の顕れとみて,矛盾がない。

 現に,本件を受けて,八角理事長は,-その動機・意図はいろいろ考えられるところであるが-,さっそくに文科省(スポーツ庁長官)への働きかけを開始しているではないか。「政治」によって捜査がゆがめられる危険性があることは周知の事実であろう。

 弊ブログ https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=190 参照

 

5.貴乃花の真意・動機は何処にあるのか?

      つづく