北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

泥沼化する遺産分割事件における近親憎悪

亡父・亡母の遺産(亡父の会社の経営権・株式等)をめぐる,4人兄弟姉妹の遺産分割が泥沼化している。残念ながら,詳細はプライバシー情報なので書けないが,
いろいろ考えさせられることが多い。

兄弟構成は,長女A・長男B・次女C・次男Dの4名であったが,
現在は,長男Bが亡くなり,
「長女A=長男の嫁B’」(同盟軍)VS「次女C=次男D」(連合軍)
の対立構造だ。
私は,次男Dの小学校時代の同級性で,「次女C=次男D」の連合軍が依頼者だ。
もともとは,父(認知症)亡き後の,母(アルツハイマー型認知症)の生前,
Dからの相談内容は,「長男の嫁B’による,母の高齢者虐待が疑われる」というものであった。が,その後,B’が区役所に届出た,孫E(B・B’の長男)と両親との養子縁組届が,実は,B’Eが仕組んだ偽造であったことが発覚した。(作成日の当時,父は,入院中で,麻酔から目が覚めていなかった。)
そこで,C・D連合軍は,Bとも同盟を結んで,養子縁組無効の確認訴訟を提起したところ,その後,Bが,B’E側に寝返った。
そして,その訴訟係属中に母が死去したが,
まもなくして,Eが,
「亡祖母(ABCDの亡母)から遺言書を預かっていたのを思い出した。」
などと称して,Bを通じて,遺言書の検認手続を済ませた。
遺言書の内容は,亡母が全財産をEに相続させる,というものだ。
アルツハイマー型認知症の母が作成できるわけがない内容の遺言書で,
筆跡も亡母のものではなく,どうみても偽造されたものだ。
が,私は,当初,亡母の遺言書の偽造者は,当然,B’だと思い込んでいた。
ところが,遺言無効確認訴訟を起こした後になって,
裁判の途中で,どうも筆跡がB’とは異筆ではないかと疑問に思うようになり,
頭を悩ませていたとき,ある瞬間,ある事に気づき,慄然とした。
亡母の遺言書の筆跡の数々が,長女Aのそれに酷似していることに気づいたのだ。
もし仮に長女Aが亡母の遺言書を偽造したとなれば,
当然,亡母の遺産相続について,長女Aは,相続欠格となる(民法891条5号)。
そうなれば,亡父の会社の株式は,
B’E:CD=1:2となり,当方が過半数を制する。
   
ところが,名古屋高裁の「??判決」がCD連合軍の権利行使の障壁となった。
名古屋家裁は,亡両親とEとの養子縁組届が「B’による偽造」のため無効であると断定的に認定してくれたのに対し,名古屋高裁は,亡父の「B’による偽造」は認めたものの,亡母の署名につき,「B’による偽造」を認めなかった。
アルツハイマー型認知症患者の精神能力を全く理解していない高裁裁判官の判断には驚き呆れるほかなかったが,この名古屋高裁判決のせいで,Eは,亡母の養子とされてしまった。

ついで,遺言無効確認訴訟。
名古屋地裁は,亡母の遺言が偽造されたことまでは認めたが,
偽造者が,Aだと特定する判断を下すのに躊躇してしまったのか,
「何者か」の偽造を理由に遺言が無効であることまでは認めたが,
Aの相続欠格までは認めなかった。
これに不服の当方が,控訴したところ,
名古屋高裁は,さらに一歩後退して,
亡母の遺言書が偽造された事実さえも覆して,認めず,
かといって,遺言を有効とすることには躊躇を覚えたとみえて,
亡母の遺言能力の欠如を理由に遺言書の無効自体は辛うじて認めた。

かくて
亡父の持株に関する法定相続分の比率は,
 同盟軍(AB’E):連合軍(CD)=1:1となり,
亡父の持株に関する法定相続分の比率は,
 同盟軍(AB’E):連合軍(CD)=3:2となり,
当方=連合軍がやや劣勢。
問題は,ABDが特別受益を得ているのに対し,
ひとりCだけが特別受益を得てない分,未分割遺産の持分が増えるので,当方連合軍が劣勢を挽回する可能性が若干残っていることだ。

現在の会社の取締役は,ACDの三名。
わが事務所で,取締役会を開催し,CDの賛成多数で,
Dを亡父の会社の代表取締役に選任した。

このときのことだ。
長女Aが,「これを見よ!,心が痛まないのか!?」と言わんばかりに,
亡両親の遺骨の入った「位牌」を,次女Cの前に突き出した。
暗黙の抗議だ。
実は,次女Cが,長女Aから上記のような嫌がらせをされているのを見るのは二回目だった。それ以前にも,相続財産管理人(弁護士)の立会いのもと,亡母の部屋と遺産管理状況を視察に,現地に出向いた際,現場に立ち会ったAから,そのような嫌がらせをされていたのだ。

が,しかし,
亡母の遺言書を偽造した(と思われる)長女Aに,
あのようなマネをする資格などない。

私は,次女Cにアドバイスした。

「今度,姉さん(A)に会うときは,必ず,鏡を用意しておきなさい。
 彼女が位牌を差し出してきたら,即座に間に鏡を置いて,
 あの位牌が,お姉さん(A)の方を向くようにしてやりなさい!」と。