北口雅章法律事務所

弁護士選びChoose a lawyer

「弁護士の目」から見た,“弁護士選び”のコツと,ポイントを伝授いたします。あなたの「鑑識眼」の涵養(かんよう)にお役立てください。
point1

比較

複数の弁護士を
徹底的に「比較」しよう!

[解説]

もともと裁判官にもアタリハズレはありました。そして,法曹人口の大量増員政策の結果,「法曹資格=社会的信頼」という図式が「幻想」と化してしまいました。弁護士も,“ヨリドリミドリ”といえば聞こえはいいですが,“玉石混淆(ぎょくせきこんこう)”というのが内情です。一般市民の多くの方々にとって,裁判は,一生に一回経験するか否かの一大事であり,中小企業の経営者の方にとっても,裁判ともなれば,ときに会社の命運・名誉・信用をかけて挑むべき試練の場でもあり得ます。

重大な法律問題や紛争が発生した場合は,(既に顧問弁護士がみえる方は別として)必ず複数の弁護士に相談されたうえで,その各回答結果を「比較」・検討することで,弁護士を慎重に「選択」「選別」するのが得策です。

point2

相性

弁護士との「相性」は
重要なポイントです。

[解説]

弁護士でも,価値観・理念・スタンスの違い,あるいは,

武闘派か穏健派か等,タイプは千差万別です。これから弁護士と二人三脚で,裁判等の法律手続を始めることをお考えのあなたとしては,実際に弁護士に相談してみて,直感的に「肌が合わない」とか,「相談しにくそう。」と感じられたときは,事案処理等の委任は避けた方が無難でしょう。この意味で,法律相談は「お見合い」の場でもあります。

“弁護士選び”も,「人柄」をみて,自分と「相性」が合うか合わないかを,労を厭(いと)わず,「相談料を払ってでも」直に確かめる作業が,必要不可欠です。

もっとも,一回の法律相談(面談)で弁護士の「人柄」を見抜くことは至難の技かもしれません。その場合は,対象弁護士から「弁護士の職責への熱意」を感じとることができるか否か,「頼りがい」がありそうか否か,といった類の印象がポイントになりますが,以下の⑶ないし⑸の諸点をも考え合わせて選択するのが得策です(もちろん,途中で,弁護士を乗り換えるという方法もありえます)。

point3

納得

相談の回答(結論・方向性)に
「納得」できたか。

[解説]

 紛糾した複雑な紛争の多くは,経験豊富な弁護士であっても,なかなかスパッと割り切った回答ができないケースもあります。しかしながら,のらりくらりと,曖昧でぼやけた回答しか示されない(示すことができない)弁護士は要注意です。

複雑な事案であれば,慎重な弁護士であれば,「調査・検討にお時間をください。」といって即答を避ける場合も当然ありえます。しかしながら,弁護士からの最終回答に明解な方針の提示がなされること,その回答・方針に対して,あなた(相談者)自身が「納得」・共感できることこそが,弁護士との信頼関係を構築するための前提であると考えます。

point4

実績

「実績」のある弁護士か。

[解説]

“弁護士選び”において,「実績」の有無を強調しすぎると,ベテラン弁護士に有利に働くので,発展途上の若手弁護士から恨まれそうです。しかしながら,「弁護士の実力」の中核をなす「知識と経験」の豊富さを量る尺度としては,「実績」こそが最も確実です。もとより,ベテラン弁護士であるからといって,必ずしも「客観的な証拠」に裏打ちされた「実績」がそなわっているとは限りませんし,「実績」といっても,特定分野に限られるのが通常です。他方,若手弁護士であっても,自らの「研鑽と熱意」により,また,実力のあるベテラン弁護士と共同受任することにより,着実に「実績」を築きあげるチャンスがあります。

さて,「実績」といっても,問題はその中身です。ホームページ等で,「解決事例」,「取扱い事例」を多数紹介されている弁護士もみえますし,「取扱い件数」を誇らしげに公表している弁護士もみえます。もちろん,そのような弁護士・法律事務所が,経験値が高い弁護士が少なくとも1名所属する事務所であることは疑いありません。しかしながら,そのことが直ちに「実力」に裏打ちされた「実績」があるといえるかどうかについては,私は,むしろ懐疑的です。

通常の一般事件,とくに定型的な事案(例えば,過払い金請求や,債務整理等がその典型です。)であれば,どのような弁護士に委任しようが,成果は大同小異です。これに対し,専門的訴訟になりますと,「どの弁護士に委任したか」で結論が大きく左右される場合があり,示談による解決では,真に妥当性のある解決であったか否か,「第三者(プロ)の目」で検証することができません。また,当事者双方の合意だけで成立する示談による解決と,「裁判官による裁定」(判決)とでは,自ずと重みが異なります。真に「実績」のある弁護士であれば,公刊物(例えば,判例時報や判例タイムズ等の法律雑誌や,最高裁のホームページの「裁判例情報」)に掲載され,他の弁護士の参考に供されるような重要な裁判例について,何件かの取扱い経験があるはずです。逆に,そのような同業者の目に触れるような実績を提示できなければ,確たる「実績」があるとはいえないでしょう。

ちなみに,ホームページ製作業者によっては,「お客様の声」的なものをホームページ上で紹介することが,顧客吸引のために「一番効果的」であるといって,その掲載を推奨されることがあるようです。実際,顧客・依頼者から感謝の意を示す礼状や,アンケート結果等をホームページに多数掲げている法律事務所のホームページも散見されますが,これなどもマユツバものの典型例ですね。誰しも,御世話になった弁護士に対しては感謝の気持ちを示すのが当たり前といえば,当たり前のことといえなくもありませんし(外科的手術が成功したときに,患者が外科医に述べる感謝の言葉を思い浮かべてください。),むしろ,私の感覚としては,意図したとおりの結果が得られたときの依頼者の“喜びの声”や“感謝の意”が書かれた礼状など,気恥ずかしくて公表など到底できません。

point5

費用

「弁護士費用」が
リーズナブルであるか。

[解説]

近時,法律事務所の宣伝広告の中には,「相談料・初回無料」,「着手金0円」あるいは「完全成功報酬制」いったキャッチフレーズが目につくようになりました。

しかしながら,よくよく考えてください。われわれ弁護士は「在野(ざいや)法曹(ほうそう)」といいますが,裁判官や検察官とは異なり,税金から給与がいただけるわけではありません。法律事務所を運営・維持するためには,月々,相当程度の経費(事務所の賃料,事務員の給与,パソコン・コピー機のリース代等々)を稼がなくてはなりません。

したがいまして,如上の宣伝広告をしている法律事務所の多くは,―多数の優良な顧問先を擁しているような法律事務所は別として―,法律相談料を無料にしても採算が合うように弁護士費用等を調整していることになります(例えば,効率よく,確実に報酬が得られる交通事件しか受任しないとか,報酬を高めに設定する等)。この意味で,「弁護士費用」がリーズナブルに設定されているか否かは一応のチェックポイントとなります(弁護士には,職務規程上,事件受任時に「弁護士費用」についても,委任者に対して説明義務があります。)。

ちなみに,現在,弁護士費用の設定は自由化されましたが,自ずと相場はあります。その相場を一番確実に知る方法は,各弁護士会のホームページを開いていただいて,弁護士会の役員(正・副会長)経験者をお調べいただき,その上で,その役員経験者のホームページを2,3例あたってみて,各々報酬基準がどのように設定されているのかをお調べいただければ,自ずと適正な相場が判断できるものと思います。