北口雅章法律事務所

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伊東市長は、何故、卒業証書を「公表」しないのか?

 

 

「(卒業証書の)提出の拒否」は、「日本国憲法第38条第1項に保障された、自己に不利益な供述を強要されない権利に基づくものであり、地方自治法第100条第3項にいう『正当な理由』に該当いたします。」

これは、一般論としては、正しい。

 

 

しかしながら、弁護士の権利・義務、具体的には、守秘義務(弁護士法23条)、供述拒否権(地方自治法100条2項、民事訴訟法197条2項)、押収拒絶権(刑事訴訟法105条)を援用するのは、いかがなものか?

これら弁護士(弁護人)の権利・義務は、依頼者(伊東市長)の同意があれば、すべて解除される。したがって、「卒業証書」を公開するか否かの判断については、結局は、依頼者(伊東市長)が「被疑者としての」自己負罪拒否特権(憲法第38条第1項、地方自治法第100条第3項)を行使するか否かにかかっているのであって、「弁護士(弁護人)の権利・義務」への言及は、余計な「お飾り」に過ぎない。

「顧問弁護士の一人に委託」とある。
であれば、顧問弁護士は複数いることになる。
だったら、なんで、「顧問弁護士全員に委託」と書かないのか?
「弁護に消極的な顧問弁護士」がいるということか?
その「顧問弁護士」は、伊東市議会議長宛の「記録提出請求に対する回答書」で、何故、堂々と名前を出して、弁護士名義の回答書を作成しなかったのか?

「卒業証書が無実を証明する証拠」であるならば、堂々と公表して、
静岡地検・静岡県警の捜査を抑制するのが「王道」であろう。

 

にもかかわらず、「公表を拒否する」ということは、そのような「王道」を歩むことができない、つまり、「卒業証書が無実を証明する証拠」ではない、ということになる。

では、何故、「顧問弁護士の一人」(受託者=受任者)が、「卒業証書」を公表しないのか?
考えられる理由は、卒業証書の存在自体から、伊東市長自身が「東洋大学卒業」と誤信していたことを証明する証拠、つまり、「故意」犯を否定する証拠として、「刑事裁判の隠し球」として活用したい、という思惑があるのではないか?

この場合、有能な「顧問弁護士」がついているのであれば、当然のことながら、静岡県警が、東洋大学に対し、捜査照会(刑事訴訟法197条2項)をかけるとどうなるか?を考える。
まず、「卒業生でない」ことは、東洋大学が証明してくれよう。
問題は、彼女(伊東市長)に対し、大学当局が、「除籍」通知を出していること(つまり、彼女の悪意=故意)を証明する証拠資料を静岡県警に提供できるか否か。刑事訴訟的には、ここが勝負の分かれ目であるように思える。

だが、政治的には、そんな「胡散クサイ」人物を誰が信用・支持しようか!?

ツッコミどころの多い、「記録提出請求に対する回答書」だといわざるを得ない。