北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

日蓮の礼状

日蓮が晩年、体調不良の折、信徒(南条時光)の母から、酒と薬草(カツ香)の差し入れを受けた際に、したためた礼状は、次のとおり。

「最近、心身も衰弱し、寒さに責められ、体は冷え切っておりました。
 ところが、このたびいただいた酒を温かく沸かして、カツ香をはたと食いちぎって、一杯飲みますと、胸で火を燃やすようであり、湯船につかったようです。噴き出す汗で垢(あか)を洗い落とし、汗の雫(しずく)で足の汚れを洗い落とす。
 この志に対しどのようにすればいいのかと嬉しく思っていると、思わず、一筋の涙が頬を伝い落ちました。」
(『上野殿母尼御前御返事』弘安四年[1281年]12月8日)

最後の一文は、私が勝手に改訂しました。

植木雅俊先生によると、最後の一文の、原文の現代語訳は、「この志に対しどのようにすればいいのかと嬉しく思っていると、両目から一粒の涙が浮かんでまいりました。」とのことですが(NHKテキスト「日蓮の手紙」)、「両目から一粒」というのは、やや違和感があります。