「免疫力」に厳格な医学的定義がないことは，後掲・記事からわかった（「免疫」の機序については，医学的な定義づけがなされているのであろうが。）。

しかしながら，われわれは，日常用語としては，大雑把に「免疫力」≒「抵抗力」という意味で用いており，多くの医療従事者も，病原菌・ウイルス等に対する「耐力」という趣旨で「免疫力」という言葉を用いることがあるのではないか。

そもそも，「乳癌の専門医」は，「免疫」の専門ではなかろう。
また，「免疫力」という概念が，科学的・医学的には「漫然とした概念」に過ぎず，検査数値で示されるような客観的な基準がないというのであれば，逆に，「免疫力が下がっていなかった」という否定的な断定もできないのではないか。

南淵医師としては，放射線治療を受けている患者に過度の不安を与えないようにという配慮から取材に応じたものと思われるが，科学的・医学的に「明確な定義がなく」，したがって「断定できない」ことについて，　「免疫力が下がっていなかった」と断定的に報道するのは適切でなく（南淵医師も，報道記事によれば，「免疫力が下がっていなかった」と述べているわけではない），「（岡江さんは）免疫力（ウイルスへの抵抗性）が下がっていたとまでは断定できない」が正確なところではないか。