北口雅章法律事務所

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「説得力を欠く」 高野利雄・元名古屋高検検事長の形式論

高野利雄・元名古屋高検検事長の相撲協会・外部理事,兼・危機管理委員会委員長としての,「元検事にあるまじき」「粗雑な調査」や「目に余る」非常識な行動の数々について,先のブログにて批判したところ,思いがけず多くの方々にお読みいただけたようだ。
(賛同されているのかどうかは,知り得ないが・・・)

本件の背景にある根深い問題を,法律家らしい切り口で是正しようという態度を示さず,
腐った現相撲協会の体制維持に徹する高野・元検事長の態度を前に,
良識ある国民はあきれ果てているのではないか,と想像される。

先般の「中間報告」からは「当然に」予想されたとおり,
今般28日,
日本相撲協会・理事会は,貴乃花親方に対する「理事解任」の方針をうちだし,
鳥取「区検」は,事件に至る経緯等の背景事情の捜査を懈怠し,ひとり日馬富士だけを傷害罪で立件し,鳥取簡裁に略式起訴(罰金刑相当)するなどといった,「微罪」処分にとどめた。

やる気のない捜査機関と,腐った相撲協会など,もはや私にとってはドーデモいい,ってな感じであるが,

高野利雄・元名古屋高検検事長の,今般の理事会での発言に対し,
行きがかり上,「貴乃花親方」支援の立場から,反論しておきたい。
(なお,事実関係は,12月29日の朝日新聞の記事を前提とする。)

相撲協会の高野利雄・元名古屋高検検事長(危機管理委員会委員長)は,
①「巡業部長の貴乃花親方が秋巡業中に起きたこの問題を協会に報告しなかったこと」
②「被害者で弟子の貴ノ岩と貴乃花親方本人に対する危機管理委員会の聴取に速やかに応じなかったこと」
以上の二点が,貴乃花親方(理事)の問題であるとしたうえで,
「被害者側の立場にあることを勘案しても」,
「理事そして巡業部長としての緊急事態発生の報告を怠ったことの責任は(「理事解任」事由に該当する程度に)大きい。」
と断じた,という。

結論的には,到底,承服できない。
まず,①の点は,
貴ノ岩と貴乃花親方が鳥取県警に対し「傷害罪」の被害届を出したのは当然の措置であり,相撲協会に報告すれば,事の重大性を顧みず,「相撲協会の面目・体面」のため,「ダーティ黒鵬」らをかばって,「揉み消し」「隠蔽工作」に奔走することが当然に予想されたのであるから,いずれ判明することになる「被害届」の報告を当面見合わせたからといって,相撲協会のいかなる法益が侵害されたといわれるのか,全く不明である。たとえ,相撲協会が,巡業部長(貴乃花親方)からの「緊急事態発生の報告」を受けたからといって,相撲協会としては,本来,何も手出しは出来ない(捜査には介入できない)はずであるし(高野・危機管理委員会が,元高検検事長のツテを使って,捜査機関に不当な圧力を加えない限りは!),相撲協会関係者は,鳥取県警・鳥取地検の捜査が終了するまでは,事件の関係者と接触すべきではない!!,というべきであろう。協会自体が「口裏合わせ」を先導するようなものである。
そもそも,被害届の提出後は,鳥取県警から,相撲協会に対し,日馬富士,白鵬,鶴竜の三横綱に加え,照の富士からの事情聴取の申入れがあったというのであるから,この時点で,相撲協会は「緊急事態発生」を覚知するに至っていたのであり(この意味で,巡業部長からの報告と同様の目的が満たされている。),この間の貴乃花親方の報告義務違反は,単なる形式的な手続違反にしか過ぎない。このような形式違反をもって,懲戒処分の対象とすることは「公益通報者保護法の精神」にも反する!!
(当然,他のモンゴル系三横綱の各親方も「緊急事態発生」を知り,又は知りうべき立場にあったのではないか。彼ら各親方らには報告義務はないのか?)

次に,上記②の点は,論外である。
「危機管理委員会が貴ノ岩を聴取することは,警察の捜査に支障をきたす(可能性がある)」という貴乃花親方の弁明は,「理」にかなっており,
それゆに正当性がある。したがって,警察の捜査段階で,相撲協会・危機管理委員会による「独自」調査への協力要請に応ずるいわれなど全くない。相撲協会・危機管理委員会の方こそ,事件関係者への働きかけを自重すべき立場にあるというべきだ。
これに対し,高野利雄・元名古屋高検検事長は,
「聴取の是非を県警に事前に問い合わせ,『協会の判断に任せる』との了解をとっていた」というが,そのような高野・元検事長の「独善的な」行動の方が不相当な,非常識行動であり,貴乃花親方から,「そんなこと知るか!!」と言われれば,それまでのことである。
高野・元名古屋高検検事長は,「このことは貴乃花親方も承知していたはずで,委員会の要請を拒否する理由はどこにもなかった」などと相撲協会の理事会で報告したとのことであるが,逆にいわせもらえば,「委員会の要請を拒否していけない理由もどこにもなかった」というべきである。たとえ貴乃花親方が,高野・元検事長の非常識行動を横で見ていて,それを承知していたとしても,「委員会が貴ノ岩を聴取することは,警察の捜査に支障をきたす」おそれがあるという自らの正当な信念のもとに(顧問弁護士のアドバイスを受けてのことであろうが),「鳥取地検の最終処分が決まるまでは,協会からの事情聴取に応ずることは控えたい。」という判断を貫くことは,合理的かつ相当なものであって,何らとがめ立てされるいわれなどない。(警察と検察の捜査は,一連のものであり,刑事手続の流れに疎い素人[貴乃花親方]が,たまたま「検察の捜査が終了するまでは(相撲協会の調査に応じない)」と言うべきところを,「警察の捜査が終了までは」と言い間違えたからといって,そのような「言葉尻」を捉えて,あたかも,貴乃花親方が,途中で協会との約束を違えたかのごとくに報道したマスコミ報道にも問題がある。)
 逆に,高野・元名古屋高検検事長の方で,「危機管理委員会の調査」が必要であり,重要であるなどと,そこまで断定的にいわれるのであれば,
あなた(高野・元検事長)は,もとは「捜査のプロ」だったのだから,
「ダーティ黒鵬」や,もう一人の「黒幕」(隠蔽工作の)として浮かび上がってきた,「鳥取城北高校」の「校長兼相撲部総監督」の「石浦氏」からも,もっと詳しく事情を聞くべきではないのか?!!。
「ダーティ黒鵬」と「石浦氏」が,場所前に貴ノ岩を呼び出した経緯と理由に何の問題もなかったのか?,二次会にまで貴ノ岩を参加させた経緯と理由について,何らの問題もなかったのか?,白鵬が「酒を飲んだ」状態で,貴ノ岩を説諭したことの内容,及びその正当性について,相撲協会としてどのように評価したのか? 「危機管理委員会」の責任者として,しかるべき時間をかけた調査をしたうえで,万人が納得できるようにきちんと説明すべきであろう。
そして,黒鵬・日馬富士らと,貴ノ岩の言い分との「食い違い」についても,きちんと,どちらの言い分が合理的であり,信用性が高いのか? をきちんと合理的に説明すべきではないのか。
 その上で,再発防止策を提示し,第三者委員会を立ち上げ,その審査と評価を仰ぐべきだろうが。

以上,要するに,高野利雄・元名古屋高検検事長には,自らは,
危機管理委員会の委員長として,
なすべきこと(正当かつ綿密な調査と,是正策の提示)をなさずにおいて(棚上げにして),
ひとり貴乃花親方(巡業部長)を,その報告義務懈怠という形式的理由のもと,「悪者扱い」にし,「降格」(理事解任)を仕向けるのはいかがなものであろうか。
 そのような偏頗で(片寄った),著しく杜撰(ずさん)な対応で,相撲協会側に「正義」ないし「正当性」があるようには,到底思われない。
 私からみると,高野・元検事長を筆頭に,「元高検検事長」の「名誉ある肩書」を「印籠(いんろう)」のごとく高らかに掲げて,「悪代官」よろしく利害関係者どおしが「結託」して自分達に不都合な改革を叫ぶ,絶対少数者1名に対し「いじめ」をしているようにしかみえないが,高野利雄・元名古屋高検検事長には,自分達がやっていることの本質を,
自ら「胸に手を当てて」よく考えてもらいたい。