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「水脈(みお)」の意味

「水脈(みお)」の原義は、古語辞典によると、「船の往来が可能な程度に深い水路」とのことである。このことを示すのが、大伴家持の次の歌である。

 

堀江より水脈(みを)さかのぼる楫(かじ)の音の
 間なくぞ奈良は恋しかりける(万葉集20巻4461番)
[現代語訳](難波の)堀江の水路をさかのぼる船の櫓の音が絶え間ないように、絶え間なく奈良のことが恋しく思われる

 

このような川の流れが一定方向に絶えず流れることから、一途な想い(恋心)を象徴することになる。このことを示す和歌が、次の二首である。

 

三諸(みもろ)の神の帯ばせる泊瀬川(はつせがわ)
    水脈(みを)し絶えずは我れ忘れめや(万葉集9巻1770番)
[現代語訳]三輪山の神が帯にしてめぐらしておいでなる初瀬川、この川の流れが絶えないならば、私がお前のことを忘れることがあろうか。

 

三輪山の山下響(とよ)み行く水の
       水脈(みを)し絶えずは後も我が妻(万葉集12巻3014番)
[現代語訳]三輪山の麓を鳴り響かせて行く初瀬川の水流が絶えないように、あなたが私のことを想ってくれるならば、後々まであなたは私の妻なのだよ。

 

 

このような基礎知識を踏まえて、西行を読み解きたいところだが、
山家集に出てくる次の和歌の意味やいかに?

 

水脈(みを)よどむ 天(あま)の川岸 波たたで
  月をば見るや さへさみの神(中968番)

[現代語訳]水流の淀む天の川の岸では波も立たず、
 「さへさみの神」は、その鎮まった水面に映る月を見ているのであろうか。

 注釈書には、「さへさみの神」について、意味不明と書かれている。どなたか読み解いて教えていただきたい。

 

[追記]

やはり、杉田議員の名前の由来も万葉集でしたか。       

 

泊瀬川 流るる水脈の 瀬を早み

  ゐで越す波の、音の清けく  (万葉集7巻1108番)

[現代語訳]初瀬川の渦巻き流れる川瀬が早いので、井堰(ゐで)を超えてほとばしる波の音が清らかに聞こえてくる

【注】井堰(いせき):川中に突き出ていて、川の流れを堰き留める堤