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「水脈(みお)」の意味
- 2024-06-13
「水脈(みお)」の原義は、古語辞典によると、「船の往来が可能な程度に深い水路」とのことである。このことを示すのが、大伴家持の次の歌である。
堀江より水脈(みを)さかのぼる楫(かじ)の音の
間なくぞ奈良は恋しかりける(万葉集20巻4461番)
[現代語訳](難波の)堀江の水路をさかのぼる船の櫓の音が絶え間ないように、絶え間なく奈良のことが恋しく思われる
このような川の流れが一定方向に絶えず流れることから、一途な想い(恋心)を象徴することになる。このことを示す和歌が、次の二首である。
三諸(みもろ)の神の帯ばせる泊瀬川(はつせがわ)
水脈(みを)し絶えずは我れ忘れめや(万葉集9巻1770番)
[現代語訳]三輪山の神が帯にしてめぐらしておいでなる初瀬川、この川の流れが絶えないならば、私がお前のことを忘れることがあろうか。
三輪山の山下響(とよ)み行く水の
水脈(みを)し絶えずは後も我が妻(万葉集12巻3014番)
[現代語訳]三輪山の麓を鳴り響かせて行く初瀬川の水流が絶えないように、あなたが私のことを想ってくれるならば、後々まであなたは私の妻なのだよ。
このような基礎知識を踏まえて、西行を読み解きたいところだが、
山家集に出てくる次の和歌の意味やいかに?
水脈(みを)よどむ 天(あま)の川岸 波たたで
月をば見るや さへさみの神(中968番)
[現代語訳]水流の淀む天の川の岸では波も立たず、
「さへさみの神」は、その鎮まった水面に映る月を見ているのであろうか。
注釈書には、「さへさみの神」について、意味不明と書かれている。どなたか読み解いて教えていただきたい。
[追記]
やはり、杉田議員の名前の由来も万葉集でしたか。
泊瀬川 流るる水脈の 瀬を早み
ゐで越す波の、音の清けく (万葉集7巻1108番)
[現代語訳]初瀬川の渦巻き流れる川瀬が早いので、井堰(ゐで)を超えてほとばしる波の音が清らかに聞こえてくる
【注】井堰(いせき):川中に突き出ていて、川の流れを堰き留める堤