北口雅章法律事務所

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最高裁調査官に祈る日々

弁護士は、高裁判決に不満があるときは、最高裁に不服の申立てをする。
しかしながら、憲法違反等、よほど重要な法令違反が明白に認められない限りは、最高裁は、個別案件を受け付けない。いわゆる「門前払い」「三行半決定」を下す。弁護士がどれだけ心血を注いで、上告理由書あるいは上告受理申立理由書を書いても、近頃は、特に個別的事案には冷たい。

上告理由(理由欠如、理由不備等)と構成しても、実質的には上告受理申立理由と理解され、現行の上告受理申立て制度においては、上告人の申立てを受理するか否かについて、最高裁に自由裁量が認められているからだ。この場合、第一次的に、最高裁調査官が、各事案に、最高裁が受理して判断を示すべき程度に「重要な法律問題」を含むか否かを判別し、調査報告書にまとめた上で、主任の最高裁判事に報告することになっており、この時点で、「重要でない」と判断されれば、「持ち回り審議」に付され、「三行半決定」がくだることになる。

元最高裁判事の藤田宙靖先生によると、最高裁調査官に抜擢されるのは「真に優秀な若者達」であったいう。曰く「私が(最高裁判事として)在任した七年半に最高裁に在籍した調査官は、計106名。いずれも、まさに『打てば響く』という表現がそのままに当てはまる。真に優秀な若者達であった。何より嬉しかったのは、こちらの問題提起を直ちに正確に理解し、その上で優れた提言を、時間を措くこと無く示してくれる。その反応の早さである。(東北)大学の教師時代にも、長年にわたり、学生や研究者等多くの若者との対話をして来た私であるが、残念乍ら、こういった知的快感を得られることは、そう多くはなかった。……最高裁の内部に置かれたサポーティングスタッフの有能さと層の厚さ。……が、調査官はもとより、書記官、秘書官、事務官から運転手に至るまで、私は、人生の大方を過ごしてきた国立大学法学部との余りの違いに嘆息をし、……」と書かれている(「最高裁回想録 学者判事の七年半」有斐閣224頁

なるほど、今年の3月まで名古屋地裁民事9部(行政部)にみえたS判事は、『打てば響く』ような優秀さだった。そこで、この4月の異動で、彼の転勤先は何処だったかな?と思って調べたら、やはり最高裁調査官だった。たぶん、彼は行政部門の上告理由の有無を慎重に判断するであろう。

だが、私が現在、上告している2件は、いずれも民事部門の事案(医療過誤訴訟)。
あれだけ非道い「手抜き」の高裁判決が覆らないようであれば、「真に優秀な若者達」という藤田先生の評価は、いったいどのように理解し、我々弁護士は、いったいどのように納得したらよいのだろうか…??という疑問に逢着することになる。

 

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