北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

Max Weber 『アジア宗教の救済理論』から

実家の書棚から大学時代に買い,下宿部屋に積ん読してあった
マックス・ウェーバー『アジア宗教の救済理論』(池田昭訳)
を見つけ出して,「古代仏教」に関する既述部分だけ読んでみたところ,
頭が痛くなった。

仏教の,神秘主義的な,無感動的恍惚のオイフォリー(Euphoria 陶酔感)によって心理学的に条件づけられた愛の無宇宙主義という訳語が出てくる。多分,逐語訳するとこうなるのであろうが,この意味を一読して分かる方がみえたら,尊敬します。多分,中村元先生(仏教学者)でも,Max Weber の宗教社会学を最初から精読しないと分からないものと思われる。

法科大学院教育で,実際に実践されているかどうか知らないが,
「ソクラテスメソッド」という教育方法を「売り」にしている法科大学院があったや聞いている。これに近い用語が,Max Weber の前掲著に出てきた。
「ソクラテス的問答」だ。

曰く仏陀の典型的な活動形態は,ソクラテス的問答である。これを通じ,説教相手は,熟慮ある論法の道によって非条理を悟らされ,屈服せざるを得なくなるのである。ガリラヤの予言者の短い比喩,・・・,またアラビアの聖なる軍隊指揮官の厳格にもとづく命令に相応するものが,仏陀の活動のもっとも固有の形態であったように思われるかの講演と説話には存在しない。これらは,冷静かつ,即物的で,[しかも]いかなる内的興奮にもくみしない配慮を,純粋に知性に対し働かせ,[さらに]絶えず体系的―討論術的に,対象を最高に論じつくすものである。」

・・・そういえば,手塚治虫の漫画『ブッダ』にも,
仏陀の「ソクラテス的問答」を描いた場面が,いくつかあったよね。

 

仏陀が,ヒンドゥー教的思想家に対し,
自己の教説は非常に単純であり,どの子供にも理解され得るものであると保証したことについて,
Max Weber は,「正当」だと指摘しつつ,
強烈な「皮肉(?)」を込めている。
曰く「この仏陀の保証は古代ヒンドゥー教的意味における『著しく良家の子供部屋』に由来する子供にのみ,あてはまることであったからである。」と。

今,日本国中,コロナウイルスの非常事態のために,児童が学校に出向けず,
家庭学習が強要される御時世では,
皆様方のお子さん,お孫さんの勉強部屋においては,日本の将来のため,
ヒンドゥー教的意味における『著しく良家の子供部屋』」にしていただく必要がある。