北口雅章法律事務所

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円空仏(ENKU)入門4「荒子観音寺所蔵・聖観音の魅力」

[問]荒子観音寺(名古屋市中川区荒子町)所蔵の円空作・聖観音像の魅力はどこにあるか。

 

実は,この聖観音を正面からまじまじとみただけでは,
その魅力は分からない。大きく強調されたかにみえる鼻の形状から,
「ミムラ姉さん」を思い浮かべるのがせいぜいのところだ。

 

が,この聖観音像を側面から観察したらどうであろうか。

[写真] 長谷川公茂編『定本愛知県の円空仏』(郷土出版社)より

やわらかく慎ましやかな口元に,
理想的な女性的魅力が集約されている。
まるで超美少女の天女が極楽から天下ってきたかのようだ。
円空は,荒子観音寺に逗留していた延宝6年(1678年)頃,
すなわち,40歳代後半の頃,
「モデル」になったと思われる若い尼僧を対象として,
あらかもレオナルド・ダ・ヴィンチの如く,忍耐強く徹底的に観察し,
それを,あたかもラファエロの作品の如くに「理想化」し,
その理想像を鑿(のみ)の彫刻において再現した上で,
「魂(命)を吹き込む」といった奇跡の「神業」を習得していたことになる。
私は,荒子観音寺の聖観音像の魅力は,側面像を観察することによってこそ,はじめて感得できるものだと思う。
そして,円空は,本像の造顕直後の時期(延宝7年=1679年),
彼が崇拝していた白川神から,「是有廟」(御主の造顕する仏像には神霊が宿っている)とのご託宣を受けており,その旨を熊野神社(岐阜県郡上市美並町)で造顕した十一面観音の背銘に墨書している。