北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「痴漢の詫び状」の書き方

弁護士は,あらゆる紛争当事者の代理人として,
いろいろな通知書・連絡文書を作成する仕事の委託を受ける。

今なら,敬遠してしまいそうな仕事であっても,
イソ弁時代(修行時代)は,ボス弁の仕事の手習い(下請け・見習い)を,
いろいろさせられた,否,させていただいた。

(Iボスは,イソ弁の未熟な文章でも,ツルツルっと添削して,
 1級の文章に仕上げるのが得意技だった。)

事務所の書類を整理していたら,ひょんなところからIボスの添削文書が出てきた。

「痴漢をしてしまい」懲戒処分に瀕する相談者の「詫び状」の代筆だ。

同じ相手(父・娘)に2回も「詫び状」を出している。
その間2ヶ月,間が空いているので,その間,無視され続けたようだ。

 

<1回目>

「拝啓 ・・・・
 突然のお手紙で失礼いたしますが,私どもは今般,
・・・・(住所)Aから相談・依頼を受けました代理人弁護士でございます。
 さて,去る○月○日夜,地下鉄○○線列車内におきまして,右Aが貴殿らに対し多大なるご迷惑をお掛けしたことに対しまして,私どもが本人に代わり,書中乍(なが)ら,まずもって心から陳謝申しあげます。Aにおきましても,酩酊中のこととはいえ,今回の度の過ぎた行動は,軽率,慚愧の至りで,深く真剣に反省しているところであります。何をおいても,貴殿らの不快に対し心底からお詫びを申し上げたい気持ちでありますことをお伝えさせていただきます。本来ならば,Aから直接お詫び申しあげるべきところ,貴殿らに更なるご不快をお掛けしては申し訳なく,このように代理人弁護士を通しての謝罪と相成りましたことをご理解・ご容赦賜りたくお願い申しあげます。
 つきましては,・・・・,近日中に直接ご面談の機会を与えていただきたく存じますので,・・・・・」

 

<2回目>

「拝啓 ・・・・
 過日,Aが貴殿らにお掛けしたご迷惑につきましては,改めてお詫び申しあげます。
 さて,先般私どもよりお詫び旁々(かたがた)面会のお願いの手紙を差し上げ,その後電話にてお詫びと示談のお願いをさせていただいておりますが,今日まで貴殿らのご了解をいただくまでに至っておりません。
 ただいま,Aにおきましては,貴殿らに対する謝罪の気持ちと,今回の事件に対する反省,自戒を胸に謹慎する毎日であり,貴殿らの赦しを心から念願しているところであります。
 Aは,昭和○○年愛知県に奉職した公務員であり,以来○○年間を真面目に職務に精励して参りましたが,今回の不祥事により,これまで永年築いてきた信用を一瞬にして失う結果となりましたことは,自らが招いたこととは言え痛恨の窮みであり,・・・・」

・・・Iボスの添削文となると,懐かしさに,つい読み耽ってしまう。
我ながら,弁護士の仕事は,―必ずしも割に合わない―ストレスフルで,大変な仕事だとつくづく思う。