北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

弁護士会が,同属の弁護団に訴えられる時代

神奈川弁護士会が,同属の弁護士4名に訴えられるとの異常事態
報道されていた。その背景には何があるのか?
高い「理非弁別能力」「倫理観」が求められる弁護士業界で
いったい何が起きているのか?

(令和2年8月13日 中日新聞)

(令和2年8月12日 朝日新聞)

新聞紙面を読んだだけでは,「内情」は,「外野席」からは分からない。
が,今から20年前~30年前,いわゆる「司法改革」が本格化する前では,
およそ考えられなかった異常事態が生起している背景には,
弁護士ないし弁護士業界の“著しい劣化”
があることは誰も否定できないのでないか。

紙面を読んだ限りでは,常識的には,
神奈川弁護士会がやったことは「脱法行為」=違法だと思われる。
この意味では,弁護士会を訴えた弁護士らの主張「正論」だ。
わざわざ弁護士会内部でワーキングチームを組んで,
「脱法行為」を推奨したとなれば,驚き呆れるほかない。
神奈川弁護士会は,何やっているのか?というレベルに,
“弁護士会自体が劣化”してしまっているのではないか??と強く疑われる。

が,その一方で,

「決議無効確認の」訴えを起こした弁護団は,
はたして勝訴できるのか?というと・・・
かなり疑問である。
こんな団体内部訴訟に「確認の利益」があるのか?,「訴えの利益」が認められるのか?
(もしこれらが欠如すれば,確認訴訟は「却下」される。)

普通に考えれば,
訴えられた弁護士会あるいは前弁護士会会長が「ヤバイ」と思い,
双方の顧問契約を解除し,顧問料を返納させれば,
「確認の利益」や,「訴えの利益」は,消失して訴え却下となるのではないか?
もちろん,弁護士会を訴えた弁護団としては,事態がそのように推移すれば,
それで提訴の目的を達したというのであれば,満足かもしれない。

がしかし,その場合も,「弁護士会の内輪揉め」という「醜態」を
世間に晒すことに何か意味があるのか?と言いたい。
「違法でアホな」決議を可決させた弁護士会を懲らしめたい,というのなら,
「訴え却下」では,「戒め」にならない。
最初から,不法な顧問料を支払った弁護士会長,それを受け取った前弁護士会長,不法な「脱法的手続」に加担した「ワーキングチーム」の弁護士らを懲戒請求した方が,格段に有効であり,感銘力があるものと思われる。
したがって,弁護士会を訴えた弁護士らに対しても,何となく中途半端なものと感じる。

ひるがえって愛知県弁護士会の場合はどうか。
歴代会長は,無報酬で,献身的に弁護士会の代表業務に尽力するので,
今のところ,神奈川弁護士会のごとき「恥さらし」の問題は生じない。
仮に近い将来,弁護士会長業務を有償化したとしても,
あるいは百歩譲って,一部会員の理解の得られない非合法・脱法的な手続問題が顕在化したとしても,長老的な信頼ある弁護士が両者の仲裁に入り,理非を尽くして双方を説得し,紛争を鎮静化させる方向で説得するのではないか?,と思いたい。

神奈川弁護士内部で,このような自主的な紛争解決能力,自浄能力が失われているとすれば,やはり,弁護士業界全体の “著しい劣化” が背景事情にあるものと考えざるをえまい。