北口雅章法律事務所

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司法試験講座:刑法「間接偽造」

問 下掲報道が事実として,日本国の刑法を適用した場合の,カマラ・ハリス副大統領の罪責を論ぜよ。

 

(答案例)
 本設例の場合,バイデン大統領は,大統領令(公文書)の内容を認識していないカマラ・ハリス副大統領においてはバイデン大統領に対し,その「内容を認識させずに」大統領令を作成・発令させているものと認定できる。したがって,文書(大統領令)の名義人(バイデン大統領)には,その文書の内容を理解した上で,その内容の文書を作成する意思があったとはいえないから公文書「偽造」(刑法155条1項),同行使(同158条)の構成要件に該当すると考える余地が十分にある。
 が,しかしながら,実際には,短期間に作成された大統領令の異常な数・決裁速度に照らし,バイデン大統領においては,カマラ・ハリス副大統領の差し出した文書であれば,「盲判」(サイン)でも構わないと思っていた,つまり,たとえどんな滅茶苦茶な内容であっても,大統領令の文書を作成する意思がなかったとまではいえない。それ故,間接正犯的な公文書偽造罪は成立しない。公務員職権濫用罪(刑法193条)についても,同様の理屈から,摘発することは困難であると思料される。