北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「タコの形状」の「滑り台」の著作物性

A社(原告)が,公園で「タコの形状」の滑り台を製作したところ,B社(被告)が,それとソックリな形状の滑り台を別の公園で製作したため,A社がB社を著作権法違反で訴えた。さて,A社のB社に対する損害賠償請求は認められるか?,について判示した裁判例が法律雑誌(判例時報2514号)に載っていた。

原告製作の滑り台

被告製作の滑り台

 

「実用に供され,あるいは産業上利用されることが予定されている美的創作物」のことを「応用美術」というらしい。

そして,応用美術についても,それ自体が「美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備える」場合には,著作物法2条1項1号の「著作物」として保護され得るとした最高裁判例(平成12年9月7日)があるらしい。

さて,前記「滑り台」の「美的特性」について,東京地裁(令和3年4月28日判決)は,「(全体形状からみても,実用目的を達するために必要な機能に係る部分と分離して,)美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められない」と判示して「美術の著作物」としての要保護性を否定した。

へえ,「美術鑑賞の対象となり得る美的特性」の有無について,著作権の問題となれば,裁判所でも判断してくれんだぁ・・・。A社の製作において,高名な工芸家が「監修」していて,その工芸家が法廷で「製作に苦慮しました。」と証言していた場合でも,裁判所は,同様の判断ができたであろうか(原告の制作者は,割りきれない思いだろうなぁ・・・[注:控訴されているが,控訴棄却となったもよう。])。

・・・・いわゆる慰安婦像も,「応用美術」ですかね?