北口雅章法律事務所

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裁判基準を下回る示談提示は不当か?

 

仙台弁護士会の所属弁護士らが、「ビッグモーター問題」をめぐり、「交通人身事故の被害者に対し損害保険会社が提示する示談金額が裁判基準を下回っているのは不当だ」と主張して、大手四保険会社に対し、「示談金の算定基準やその根拠など」の公開質問状を送ったという。

 私は、損害保険会社とは顧問契約していないし、損保をかばうつもりもないが、そもそも「交通人身事故の被害者に対し損害保険会社が提示する示談金額が裁判基準を下回っているのは不当」といえるのか?
 「提示する示談金額が裁判基準を下回っている」のは、保険会社の営業努力の顕れとみる余地は当然にありうるし(裁判基準を下回っていても、紛争の早期解決の観点から、交通事故被害者がこれに応ずれば、円満解決といえなくもない。)、「裁判基準」が常に正しいなどという根拠もない。私が損害保険会社の顧問弁護士であれば、内部基準は業務秘密であるから開示できません。」といって、上記公開質問には応じない方向で指導することになろうか、と思う。
 私は、近時は交通事故訴訟はあまり手掛けてないが(もっとも、ちょくちょく相談は受け付け、交通事故被害者のために、保険会社の担当者との示談交渉は行っている。)、仙台弁護士会の交通事故訴訟を専門に手掛けている弁護士らは、上記公開質問について、どのように受け止めているであろうか? 保険会社が「提示する示談金額が裁判基準を下回っている」からこそ、交通事故被害者が納得せずに、弁護士に相談し、弁護士案件として弁護士の収入源となっているという側面があるのではないか? 上記公開質問など、「大きなお世話だ」といった声は出ないのか? あるいは、そもそも「ビッグモーター問題」とは関係ないではないか?という声は出ないのか?

「正義漢を気取っている」が、公開質問するのはいかがなものか?という意見は、同業者(弁護士)からは出ないのか? 保険会社の対応は見物ではあるが。