北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「義理でも嬉しい」バレンタイン

今年も,「バレンタイン」の日がやってきた。
  もてた経験が殆どないので,
 昔から,義理チョコさえも,もらえない惨状が続いているが,
 例外的に約10年ほど前から,
毎年,バレンタインになると「お花」を事務所に贈り届けてくれる,ご婦人Bが約1名みえる。(私のブログの読者兼依頼者に,同様の贈り物を要求する趣旨ではないので誤解のないように)

このご婦人Bは,
実は,私がかつて受任し,交渉に「失敗」した
離婚事件の,相手方当事者であった方だ。
如上の贈り物は,
「弁護士冥利」
に尽きるプレゼントなので,
感謝の意を込めて,事件の概要を紹介しておきたい。

あの事件の依頼者Aは,
外国籍(仏蘭西人)の方で,会社の経営者だった。
(もちろん「ゴーン」ではないが,東京の友人弁護士からの紹介だった。)
Aの方では,強く離婚を希望していたのに対し,
相手方のご婦人Bは,「将来の不安」から離婚を固く拒むものの,
Bには,弁護士がついていなかった。
Aが離婚を希望する理由の1つに,実は,Aには既に愛人が居り,
「Bには内緒」という触れ込みで,その不倫相手との間に子もいた。
ところが,その「隠し子」のことは,当時正妻だったBにバレバレだった。

当時,Aの経営する会社は傾きかけていた。
私は,当時弁護士をつけていなかったBを事務所に呼び出し,
Aが経営する会社の内情を正直に説明し,
離婚給付として見込める金額を説明し,
離婚する方向で,検討を勧めた。

離婚交渉は難航し,いろいろ紛糾したが,
私は,Aから最大限の譲歩案を引き出すとともに
B対し,彼女に望まれる「将来設計」をも提案し,
「このまま交渉を引き延ばすと,財務内容からみて,Aの会社の経営状況が今よりも悪化し,離婚給付を得られなくなる可能性がある」旨の説明・説得を繰り返した。

が,Bは,その後,Aとの離婚交渉を弁護士(女性)に委任し,
当方(A)にさらなる譲歩を求めてきた。
私としては,Bが弁護士を付ける前から,
「公平」を期して,Aに最大限の譲歩を引き出していたつもりだったので,
Bの代理人弁護士の要求する条件では,交渉は無理だと判断した。
そして,その後,私とAとの間の信頼関係にも問題が生じ,
私は,本件を辞任することにした。

そして,その後まもなくの時期,Aの経営する会社は,一旦経営が破綻した。
その結果,Bにとっては,不本意な離婚条件を受け容れざるを得なくなったものと推察される。

そして,その後,Bから私のもとへ連絡があった。
「やっぱり,先生の譲歩案に従っておけばよかった。」と。
そして,彼女(B)は,Aとの離婚後,
私の提案どおり,彼女の語学力を活かして,
ポルトガル語の通訳として生計を立てることになった。
私も,ブラジル人が絡む事件では,彼女に通訳の仕事を紹介した。

いまでは,ある保険会社との縁が切れたことから,彼女に紹介できる仕事はなくなってしまったが,それでも,彼女は,毎年,バレンタインには,わが事務所に花を届けてくれるようになった。

いと嬉し。(^-^)