北口雅章法律事務所

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日産自動車・ゴーン前会長,事件の行方は?

ゴーン前会長が,保釈金10億円に加え,厳しい保釈条件がついたとはいえ,
公訴事実を全面否認した状態でありながら,保釈が認められた。
私が名古屋地検特捜部と闘っていた時代では,「被告人が公訴事実を否認したままの状態で保釈される」などといった事態は,刑事裁判の中で被告人質問が終わるまでは,およそ考えられなかったことだ。

ちなみに,ゴーン前会長の容疑は,有価証券虚偽記載罪(報酬の過少申告)といった形式犯を別とすれば,次の特別背任罪に係る2件とみられる。

第1に,リーマンショックの影響で,A社(ゴーン前会長の資産管理会社)とB銀行の間の金融契約(スワップ取引)において,A社(≒ゴーン前会長)に約18億5000万円の評価損が出たため,ゴーン前会長は,平成20年10月,その損失を回避する目的(自己の利益を図る目的)で,当該契約上の地位をそ日産自動車に譲渡し(押し付け!),当該評価損を日産自動車に負担させた
(特別背任罪の公訴時効は7年であるが,海外在住期間は時効の進行が停止するので[刑訴法255条,最高裁昭和37年9月18日判決],上記取引が10年前でも立件は可能。)

 

ところが,その後,証券取引等監視委員会から,
上記A社・日産自動車間の上記譲渡取引について,
違法の疑いがあるとの指摘を受けたため,

 

第2に,ゴーン前会長は,A社(自己の資産管理会社)をして,日産自動車から,前記金融契約(スワップ取引)上の地位を買い戻させたが,その際,既に約18億5000万円の評価損が発生していたため,B銀行が,A社(≒ゴーン前会長)に追加の担保を要求した。このため,ゴーン前会長の知人(サウジアラビア人)が経営するC社がA社(≒ゴーン前会長)の金融契約上の債務を保証することになったが,ゴーン前会長は,その見返りとして,自己とC社(≒サウジアラビア国籍の知人)の利益を図る目的で,日産自動車の子会社をして,C社名義の口座に合計約1470ドル(約16億円)を振り込ませたという。

・・・コレって,業務上横領罪じゃないの??

 

さて,先日,ある会食で,ある検察幹部にコソっと見立てを聞いてみた。

ゴーン前会長の事件,どうなりますかねぇ?,
 森本クン,大丈夫ですかぁ?」
「そりゃあ,・・・・・・となるのじゃないかな。」
「どうして,そんなこと判りますか?」
「だって,・・・・・,ってことがあったでしょう??」
「はぁ,なるほどぉ!!」
(検察幹部は,そういうところに目を付けるのかぁ・・・)
「だから,弁護人も,大鶴元検事から交替したんだと思うよ。」
「へぇ!,そんなウラがあるのかぁ。ふ~ん。」

と,つい感動したので,書いてしまったが,(ここまで書けば,わかる人にはわかるかな?)今回保釈を認めた東京地裁が,ここまで筋を読んだ上で,
今回の保釈決定をしたのかなぁ?

さて,弘中・大先生は,大見得を切られたが・・・

「無罪が取れてもおかしくない」ってことは,
「無罪が取れなくてもおかしくない」って言い換えられるよね?

「司法取引」(刑事訴訟法350条の2)が使われた,ってことは,
ゴーン前会長に謀反を起こした日産幹部にも,
刑法・刑訴法に習熟した弁護士が付いていて,十分な準備をして,
東京地検特捜部と綿密な打合せをした上で,
逮捕に踏み切った,ってことなんだな。

これからの企業弁護は,民事に強いだけではダメで,刑事司法にも習熟していないとアカンのだなぁ・・・・