北口雅章法律事務所

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安倍首相 「憲法9条に文民統制を明記する」 だとぉ??

以下は,朝日新聞・2017年10月8日朝刊1面からの引用( =青色文字」部分

と,私のコメントです。
  
自民党総裁の安倍晋三首相は7日夜、衆院選公示を前に与野党8党の党首によるネット討論会に参加し、憲法9条の1項、2項を残し、自衛隊の存在を新たに書き加えるとした自身の提案をめぐって「シビリアンコントロール(文民統制)をしっかり明記する」と述べた。自衛隊の憲法明記に対する国民の不安を払拭(ふっしょく)するねらいがあるとみられる

 

意味がわからん!!!,馬鹿じゃないか??

「シビリアンコントロール(文民統制)」は自明のことであって,
憲法上も,法律上も,既に明記されている。

すなわち,憲法66条2項は,「内閣総理大臣その他の国務大臣は,文民でなければならない」と定め,同72条は,「内閣総理大臣は,…行政各部を指揮監督する。」と定める一方で,同66条3項で,「内閣は,行政権の行使(注:安保法制の適用を含む。)について,国会に対し連帯して責任を負う。」と明記している。
 また,自衛隊法7条は,「内閣総理大臣は,内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」と明記されている。そして,内閣総理大臣(実質的には,防衛省幹部)が,統括幕僚長等の幕僚長を通じて,自衛隊の隊務を統括・指揮監督し,自衛隊組織については,人事権と予算執行権を掌握しているので,実質的にも,自衛隊組織に対する文民統制は及んでいる。

 以上のとおり,憲法上も,法律上も明記され,法定されていることを,憲法で「二重に」明記する意味が何処にあるのか???

 安倍首相は,「シビリアンコントロール(文民統制)」の明記が「国民の不安の払拭」になるなどと主張したようであるが,このような主張は,法律論的には無意味なことであり,正当な根拠に基づくものではない。むしろ,良識ある国民は,何が何でも「自衛隊の憲法明記」に拘泥する安倍首相のアンチ平和主義的態度,平和憲法を軽んずる好戦的態度にこそ「不安」を覚える。

 

 

2012年の自民党改憲草案では、9条で「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」と規定している。首相が自衛隊の最高指揮官として統制することを明確化するのが目的で、今回の首相の発言はこうした規定が念頭にある模様だ

 

「2012年の自民党改憲草案」における「国防軍を保持」などという文言は,現行憲法9条2項「陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。」正面から反し,「憲法9条の1項、2項を残」すという安倍首相の前記発言と矛盾する。

 

討論では、希望の党代表の小池百合子・東京都知事が「(自衛隊を憲法に)加えると、防衛省と自衛隊の関係はどうなるか。自衛隊のほうが上位に来るのではないか」と指摘

 

ハア?? 意味がわからん!!!
防衛省設置法を真面目に勉強し直してから,出直して来い!!

と申し上げたい。
何処から「自衛隊のほうが(防衛省よりも)上位に来るのではないか」という論理がでてくるのか???,全く理解に苦しむ。

昔,WADASUの大学時代の友達が,防衛省(当時は「防衛庁」)に入省してまもない若造の時期に,幕僚長とエレベーター前で対面したとき,
幕僚長が,「ささっ,どうぞお先に。」などと「若造(でも,キャリア官僚!)」を,
丁重に上司扱いしたのを,横で見ていた幕僚長の部下がショックを受けて泣きそうな顔をしていた,
という話を嬉しそうに,得意がる友人から聞いたことがあるぞよ。

 

 

文民統制をめぐっては、南スーダンPKO部隊の日報問題で陸上自衛隊内に日報の電子データが残っていた事実が隠されていたことから、野党側が「自衛隊にシビリアンコントロールが効いていない」などと批判した経緯もある。」

 

この野党側の「批判」も意味がわからない。
「シビリアンコントロール」が屈折・濫用的に「効いている」からこそ,
防衛省のトップ(防衛大臣)が主導して「データ隠し」ができるのではないか!?

 

 

この日の討論会は、安倍首相小池代表が初めて同席した論戦の場となった。
 首相が「私たちは経済を強くした。強い経済を背景に、強い外交力を駆使し、北朝鮮の脅威に対して強固な国際関係を構築した」と、政権与党としての実績を強調。小池代表は「国の守りのためにこれまで積み重ねられてきた国の安全保障政策を基礎として、さらに安心安全の確保を追求していく。憲法改正への論議も避けては通れない」と述べた。」

お前達!!,出来レースをやって,「平和憲法」を破壊するなよ!!!

 

 

 自民党のブレーンも,佐藤誠三郎教授の頃と比べると

 (「佐藤政治学」の思い出 ⑵ - 日本の存立に改憲は必要か -参照

 [https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=519]),

 ハッキリと言って,随分と質が低下したものだ!!,とつくづく思う。

  八木秀次氏は,「自衛隊」が憲法に明記されたら,

  ①「自衛隊員の指揮を高める」

  ②「国全体としての抑止力を高める効果も期待できる。」

  といわれるが(朝日新聞2017.10.3),

   何らの,法的根拠も,政治的・社会学的根拠もない

  「幻想」である!!

   そして,

 「歴史踏まえる姿勢が欠如しているとの批判を免れまい。