北口雅章法律事務所

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またしても,最高裁第一小法廷!!

GPSを使って,元交際相手の動向をチェックしていた被告人の行為は,
ストーカー規制法違反の「見張り」行為そのものであって,
同法違反を否定した最高裁第一小法廷判決に反対する!

 

 

裁判長山口厚氏は,東京大学法学部の元刑法教授であるが(弁護士出身枠を使って割り込んできた),

近時は,最高裁判決を批判する「気骨のある」学者が減少傾向にある。
したがって,遺憾ながら,今後,
上記最高裁判決を批判する論評がでないかもしれない。

嘆かわしい限りである。

また,検察官出身池上政幸判事が,反対意見を述べないのは,
いかがなものか(サボっているんじゃないか?)と思われる。

上記最高裁第一小法廷の内容は,
 要するに,
「住居等の付近において見張り」との構成要件について,
加害者(被告人)が「見張り行為」をする場所(A地点)と,
A地点から観察される被害者の動静場所(B地点)とが,
ともに「住居等の付近」として「一致」していることが,
必要であると判示しているものと理解される。

しかしながら,

GPSの性質上,「物理的な位置関係」としてA地点とB地点の一致を要件とする合理性はどこにもなく,GPSによって被害者の位置情報を監視下に置かれることによって,保護法益(被害者の平穏な生活)は著しく害される。

「住居等の付近において」という文言からは,上記A地点とB地点が「常時」一致していることが絶対必要要件である,とはまでは読み取れない。犯人は,GPSを装着した時点で,「住居等の付近において」(A地点=B地点)見張りを開始したのであって,その後,GPS装着場所から,A地点にあった犯人の身体をB地点から離隔させても,「犯人の目」として機能する「道具(GPS)」は,被害者の自動車に装着され,B地点に残されたままである。たがって,犯人は,以後,自らの物理的な居場所としては,A地点におこうが,そこから離れたC地点に移動しようが,機能的には,「道具(GPS)」を介して,恒常的に「被害者の自動車」(B地点)という「住居等の付近」(B地点;本件では「等」=自動車である。)において,B地点=自動車=被害者の「見張り」を継続しているものと評価できる。
 GPSを装着された自動車が「駐車場を離れて異動する同車の位置情報」は,
被害者の「動静」に関するプライバシー情報そのものであって,「同人の動静に関する情報とはいえず」云々という説示は,およそ説得力がなく,ストーカー規制法の法令解釈を誤っているものと批判せざるを得ない。

 したがって,上記最高裁第一小法廷決定は,正当は判断とは到底いえず,
GPSによる「見張り」を認めた第1審判決が支持されるべきである。