北口雅章法律事務所

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「さざ波」といえば,志賀(大津)の枕詞

高橋洋一先生(内閣官房参与)が,国内コロナの感染状況について、『さざ波』と表現しただけで,噛みつく輩が多いのには,辟易する。独特のユーモアと,皮肉まじりの文学的表現を抑圧するのはいかがなものかと思う。

「さざ波」が話題になったので,万葉集を紐解くと,・・・

第1巻29番の柿本朝臣人麿の長歌で,「さざなみ(=楽浪;ささなみ)」が登場するのに始まり,第1巻29番から33番までの歌に,連続して「さざなみ」が登場する。いずれも破壊された大津京の悲哀が謳われている。したがって,万葉集の編纂開始時期は,「壬申の乱」の後,すなわち,大海人皇子(後の天武天皇)が,天智天皇の子・大友皇子を滅ぼした直後だとわかる。

29「・・・近江の国の『さざ波の』大津の宮に 天の下 知らしめしけむ天皇(すめろき)の,神の尊(みこと)の大宮は,ここと聞けども,大殿(おほとの)は,ここと言えども春草の繁く生いたる,霞たち,春日の霧(き)れる,ももしきの大宮處(おおみやところ)見れば悲しも」[現代語訳:滋賀県にあった大津京で,政権をとった天智天皇の皇居は,ここと聞くけど,御殿はここだというけれど,今は,春草が生い茂っている。霞が立って,春の日差しがにぶく霞んでいる,この大宮京の跡を見れば,悲しい]

30「ささなみの志賀の辛崎さきくあれど,大宮人の船待ちかねつ
[大意:滋賀の辛崎は昔ながらにあるが,昔,ここで船遊びしていた,宮廷人達は,いくら待っても現れまい]

31「ささなみの志賀の大わだ淀むとも,昔の人にまたも逢わめ
[大意:滋賀の大わだ(=琵琶湖)の水は淀んでしまったが,むかしの宮廷人に再会できないものか。二度と逢うことはできまい。]

32「古(いにしえ)の人にわれあれや,ささなみの故(ふる)き京(みやこ)を見れば悲しき
[大意:自分も古い過去の人間になってしまったのだろうか。大津京の跡をみると悲しさがこみあげてくる]

33「ささなみの国つ御神(みかみ)の心(うら)さびて荒れたる京(みやこ)見れば悲しも
[大意:ささなみの国(近江)を護る神の心がすさんだために,荒れ果ててしまった大津京跡を見るにつけ悲しい]

 

 

 

>優秀なエリートほど不用意な発言をするワケ

優秀なエリートほど,日本は,「言論の自由」が保障された,

「自由な社会」,「ユーモアが通じる,寛容な社会」だと思っているからではないか。

そもそも,「不用意」だとは思っていない。

想定外の「炎上」を経験して初めて,

「日本社会も,ここまで不寛容な社会になったか」と愕然とし,溜息をついているに違いない。