北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「タヒね」とのツイートに思う

「タヒね」とは,「死ね」を意味する隠語だという。
(「死」から「一」をとると,「タヒ」になる)。
ある男性弁護士(34)が、自身のツイッターで,一般論として,弁護士費用を踏み倒す依頼者について,腹立ちまぎれに「タヒね」等と呟いたことで,先般,大阪弁護士会が3月1日付けで,彼を「戒告」(懲戒のうちでは最も軽い注意処分)にしたことが話題になった(ネットによれば,「弁護士費用を踏み倒すやつはタヒね」,「金払わない依頼者に殺された弁護士は数知れず」等と投稿していたらしい。)。

 誉められたことではないが,「懲戒」にするほどのことか。
 彼を懲戒処分にできるほど,大阪弁護士会の懲戒委員の皆さん方は,見識と教養に満ち溢れ,高潔で,ご立派な方々ばかりなのか。多分,彼は,弁護士としての「品位」を問われることになるとまでは思わなかったであろうし,投稿後に周囲から,その可能性を諭されれば,即刻,反省し,ツイッター投稿を削除したであろう。

彼を懲戒請求したのは,いったい誰なのか。彼に弁護活動を委任し,尽力をしてもらっておきながら,着手金を踏み倒した依頼者か。それとも,対象弁護士とは直接利害関係がなく,弁護士のSNS投稿の監視活動を日常的に行っている「正義感あふれる」第三者か?

 フジテレビ「バイキングMORE」,バラエティーなどで,コメンテーターとして出演している「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳氏(47)が「死ね」という言葉を使わない理由について紹介する下掲記事が,亡母との思い出話を語る著書の紹介とともにネット(ヤフー・ニュース)で載せられていた。
 このような経験があれば,誰だって,「死ね」だの「タヒね」だのとは,いわないし,たとえツイッターであれ投稿しないだろう。また,たとえこのような経験をしていなくても,対象者を特定せず,一般論としてであれば,この程度のことは許容されるであろうと思ったことに,「100%誤りだ!」と否定的な評価かできるのか,といえば,そんな「窮屈で不寛容な倫理感」の持ち主とは,私自身は付き合いたいと思わない。このような許容範囲の限界が不明瞭で,評価の分かれうる余地のあるところで,弁護士会・懲戒委員会の構成員として期待される見識者の集まりが,公開で「一罰百戒」を断行するというのも,いかがなのものかと思ってしまう。

これぞ,「賢母」ですね。