北口雅章法律事務所

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「銀行の支店長任命」と「ラーメン屋の暖簾(のれん)分け」の違い

母校の同門会誌に谷口将紀教授「選挙制度改革から四半世紀を振り返って」と題する講演録が出ていたので,読んでみた。頭のいい先生の文章は,さすがに面白いし分かり易いので,疲れた頭でも,フ~ンっといった調子で読める。

当該講演録では,「銀行の支店長任命」「ラーメン屋の暖簾(のれん)分け」とが,対局にあるイメージとして語られていた。

曰く,「銀行の支店長」の場合,既に店舗・スタッフは揃っていて,「このたび支店長を拝命した○○です。」と挨拶して赴任すれば,直ちに前任者を引き継いで活動を開始することができる。これに対し,「ラーメン屋の暖簾(のれん)分け」の場合は,「師匠から○○軒なり○○家という屋号を名乗り独立してよろしいと言われるだけで,そこからどこに店を構える,調理器具を買う,スタッフを雇う,仕入れ先を決める,さらには独自の味付けを考えるところまで,一から十まで自力で立ち上げなくてはいけません。」と。

何が言いたいのかというと,公明党・共産党といった組織政党は別として,自民党・立憲民主党・国民民主党等の政党組織が脆弱であり,これら政党の選挙区支部長になることは,「銀行の支店長に任命される」よりも,「ラーメン屋の暖簾(のれん)分け」に近いイメージがあり,これでは,政党が本来果たすべき「政治家の育成機能」,「将来のリーダーを育成する役割」を果たすことができない,ということだ。

確かに。
愛知県知事リコールの会の事務局長にして,リコール署名偽造で捕まったT氏が,日本維新の会から,●●支部長に推薦されて,どこぞのテナントビルにて(先の衆議院議員選挙に出馬するための)選挙事務所を構えたときの様子を録画・撮影したテレビ動画をみたときのことを思い起こして,思わず吹き出した。

谷口教授の言われるとおりだ。「本来政党たるもの,一つ一つの選挙区ごとにとまではいかずとも,2つか3つの選挙区ごとに専従の職員がいて,事務所があって,党として地元の支持者名簿が管理されている。これぐらいのことをしなくてはいけません。」と。

でないと,・・・ということが起こりうる。

Tよ。
君は,「本来,正規に集めたリコール署名簿を,偽造署名簿にすり替えて選管に提出し,選管から受け戻した直後に『プライバシー保護』を名目に『溶かし(廃棄し)』,別途保管し隠してあった正規の署名簿の方を,ご自身の支持者名簿として活用しよう。」などと,不埒(ふらち)なことを考えたのではないのか!? このように考えないと,選管に提出された署名数から偽造数を差し引いた数と,正規に集められたと想定される数とが合わない。