北口雅章法律事務所

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米連邦最高裁の「中絶禁止」条項の合憲判断をめぐって

このほど,米連邦最高裁は,「中絶の自由」(懐胎から,胎児が子宮外で生存可能になる妊娠22週~24週まで)を「憲法上の権利」と判断していた,旧連邦最高裁判例を変更して,「妊娠15週以降の中絶を禁止」したミシシッピ州法を合憲と判断した。

 

この米連邦最高裁判決をめぐるコメントには,
理解に苦しむものが,少なくない

まず,わけのわからないコメントの筆頭は,朝日新聞の報道。
曰く,上掲・米連邦最高裁判決の影響を受けるのは,「経済的に余裕のない人(低所得者や若年層)」が,「望まない妊娠」をしたときだという。

 だが,「望まない妊娠」をしたのであれば,即座に「中絶」すれば良いのであって(今回の米連邦最高裁も州法も,妊娠15週よりも前までであれば,「中絶の自由」を認めている。),もし仮に「経済的に余裕のない」ために中絶費用が出せない(=中絶できない)というなら,中絶禁止の法律の有無に関係なく(中絶できないのは,中絶が禁止されているからではなく),まさに「経済的に余裕のない」からこそ中絶できない,というべきではないのか?? このような経済的な貧困状態は,上掲・米連邦最高裁判決の内容とは全く関係のない事情(つまり,その影響を受けない事情)である。

次に,わけのわからないコメントが,バイデン大統領の下掲・コメント。

 

「妊娠15週以降の中絶を禁止」した州法を合憲=有効とすると,何故に,「女性が性暴力によって妊娠させられた子どもを産まざるをえない状況になってしまう」(バイデン大統領)ことになるのか,全く理解できない。妊娠15週より前に,即座に中絶すればいいだけの話ではないのか。

 もし仮に性暴力被害者に「お金がない」というのであれば,「性犯罪被害者に対し,中絶費用相当額の給付金を支給する」旨の補償制度を用意していないこと自体が,立法府(州)の怠慢というべきではないのか。