北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

亡・大森彌(わたる)先生を偲ぶ

今朝きた新聞の片隅に、大森彌(わたる)先生の訃報が載せられていた。

 

大学教養部の時代、地方自治・行政学の権威である、大森彌先生(当時助教授)の政治学の講義を900番の大教室で受けた覚えがある。だが、40年以上も昔に受けた講義ゆえ、その中味はスポッと記憶から抜け落ちてしまっている。
 とはいえ、記憶に残っている雑談(?)は、三つ。

 

[小話その1]
 大森先生は、作家・筒井康隆氏のことを筒井康隆「先生」と呼び、われわれ学生に彼の著書「心狸学・社怪学」を「政治学の参考資料として」読むように勧められた。かくて、大学生協の書籍部には、同書が平積みされ、われわれ学生は真面目に読んだ。

[小話その2]
 大森先生は、確か教科書は指定されなかったと記憶しているが、われわれ法学・政治系の学生が当然に教養として読むべきものとされていた岡義達著「政治」(岩波新書)について、「岡先生の『政治』は、今の君たちが読んでも、難しくてわからないだろう。だが、君たちが50歳を過ぎる頃になると、『ああ、そういうことが書かれていたのか』とすっと頭に入ってくるに違いない。」と言われたことを覚えている。だが、大学を卒業すると、このような凝縮した内容の成書を読み返す時間も気力もない。

[小話その3]
 大森先生は、600名以上もいる学生の前で、講義の最中、突如、お話になったことがある。「君たちの中で、『死にたい』と思うことがあったら、私の研究室を訪ねてきて欲しい。私は、『死ぬな』などと、引き留めはしない。でも、今生の別れの最後に、『ちょっと楽しい処』に連れて行ってあげよう。」と。当時、学生生活は楽しかったので、私は自殺を考えたことはなかったが、その後、行方不明になった学生も少数ながら居ないわけではなく、大森先生の説話として、何故か覚えている。

 

謹んで、大森彌先生のご冥福を祈ります。