北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

裁判官(出向中)の「インサイダー取引」に想う

 驚くべき裁判官の不祥事が(実際には、特に驚きもしないが)、今朝の読賣新聞の1面トップを飾った。裁判所から金融庁に出向中の元裁判官が、インサイダー取引(金融商品取引法違反)の嫌疑で、証券取引等監視委員会による調査を受けているとのこと。東京地検特捜部への告発も視野においているそうだ。

 

 「高い識見」(裁判所法41条)が求められる裁判官が犯罪に手を染めた、となると、世間的には、よほど規範意識・自制心が欠如した、悪徳な人物を想像するかもしれない。ネットでは、人物が特定されているようだが、私は、どのような人物かは知らない。しかしながら、彼の規範意識を云々する以前の問題として、はっきり言って、単なるバカだと思う。と同時に、このような事件は、彼一人の問題であろうか?とも想う。破廉恥事件を起こす裁判官は、過去にもいた。しかしながら、私利私欲から「職権的地位・職務を悪用した」知能犯を犯す裁判官は、前代未聞ではないか。とすれば、ここにも、「司法=裁判所の著しい劣化」の現れ(徴表)とみてよさそうだ。

 

 如上のとおり本件の示す重大な社会的意味に思いを致すならば、この事件を1面トップで扱った読売新聞の編集は適切なもので、これに対し、この事件を社会面で取り上げたにとどまる、朝日新聞と中日新聞は、この事件の本質的な社会問題を正当に評価していないように思われる。

 今朝の「折々のことば」は、福沢諭吉の「すべて事の極端を想像して覚悟を定め、マサカの時にも狼狽せぬように」という言葉であった。数年前から、私自身が実践していることだ。具体的には、想像すべき「すべて事の極端」ないし「マサカの時」とは、私にとっては、連続的に「当然に勝つはずの裁判」について、連続的に「敗訴判決」を受ける場合、というということになる。だが、実際には、近時は、その「マサカ」が現実のものとなり、「狼狽」することが少なくない。
 「インサイダー取引」のような犯罪行為を平然と行えるような倫理観の裁判官がでてくる程度に「司法が劣化」している時代だ。いたしかたあるまい。

 諸悪の根元は、「司法改革」に際して、法曹資格者を大量増員したことにあると考えるものであるが、下級審の誤った判決を、滅多に是正しようとしない最高裁にも問題があるものと思われる。

 

 さて、最近、司法研修所のクラス仲間とのラインに、半分「冗談で」イヤミの投稿をしたが、全く無反応で、誰からも相手にされなかった。嗚呼。