北口雅章法律事務所

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「UFOキャッチャーの極意」だと?

「UFOキャッチャーというのは、ゲームセンターに置いてある、クレーンで人形を釣り上げる、あのマシンのことである。」「僕は、UFOキャッチャーに関してはプロ級の腕前だ。」と自称し、「僕はかれこれ十年近く、あの小さなクレーンを動かしているわけだ。そんじょそこらのにわかファンとは年季が違うのだ」と豪語する三谷幸喜(脚本家)が、そのエッセイの中で、「UFOキャッチャーの極意」について書いている(「捕獲」『オンリーミー 私だけを』幻冬舎文庫・所収)。

 

極意その1。彼曰く「とると思うな。助けると思え」
「まずは、この精神性。ボタンを押す前に全神経を集中させよう。じっとケースの中の人形たちを見ていると、彼らの声が聞こえてくるはずだ。『助けて、お願いだから』 あとは救いの手をさしのべるだけだ。つかむというより、人形の方からクレーンにしがみつくといった感じで、面白いようにとれるはずである。」

極意その2。彼曰く「人が狙った後を狙え」
「鉄則である。だいたいみな、あと百円使えばとれる、というところであきらめてしまう。だから効率よくぬいぐるみをとるには、ケースの脇で前の人がやめるまで待つのが一番だ。」

 

はたして、そうかな?
あまり大きい声では言えないが、ゲーセンのキャリアは、私の方が彼よりも格段に上である。結論からいうと、「UFOキャッチャーの極意」などない。強いて極意といえば、UFOキャッチャーで、目当ての人形(ぬいぐるみ)を取れると思うこと自体がそもそも誤っている、ということを悟ることだ。その理由を解説しておこう。

上掲・UFOキャッチャーの場合、一見取れそうに思えるのは、手前に近いに2匹の猫くらいだろう。だが、クレーンの先端をよく見てもらいたい。プラスチックのカバーがつけられ、滑りやすくなっている上、恐らく柔軟に(人形が落ちやすいように)拡がるようにできている。そして、本命の人形はいかにも重そうだ。あんなヤワなクレーンで釣り上げられる訳がない。

 

こちらの、UFOキャッチャーはどうか?
大抵の方は、Aの人形(ウサギ?)か、Bの人形(オバQ?)に目がいき、狙いを定める。だが、ウサギ(A)は、頭が極端に大きく、前後で重量のバランスを欠くので、そのバランスを保てるような所にクレーンを差し込むことは至難の技だし、持ち上げたところで、人形が揺れて、バランスを崩し、落下するように仕組まれている。そして、オバQ(B)の方は、そもそも角度的にクレーンの人形の両側腹部に入っていかない(多分)。

このように、「『助ける』のは、端から無理なんだよ。君たちもそれを望んではいまい。所詮、ゲーセン経営者に飼い慣らされているんだろ。君(=人形)たちは。」と見極めることこそが極意なのさ。