北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

福沢諭吉先生の気概に学ぶ

夏休みで帰省中の息子が,
慶應義塾の創設者である福沢諭吉先生の『学問のススメ』を読んでいた。

その中の1編である「第四編 学者の職分を論ず」を咀嚼してレポートせよ,
というが大学からの課題らしい。

 

横からのぞき見すると,なかなかイイことが書いてある。

 曰く[現代語訳(『カッコ』内は原文)]「…われら民間独立の地位に立つ者は,自由にみづから学問技術を研究し,…,あるいは法律を論議し,…,およそ国民たる身分の限界にそむかぬかぎりは,政府の鼻息をうかがうことなく(原文『忌諱を憚らずして』),着々実行すべきである。その際,かたく法律を守って,正しく事を処理すべきであるが,もしも政府が法を忠実に行わずして,そのためにわれら人民が不当の被害を受けるようなことがあったならば(『政令信ならずして,曲を被(かうむ)ることあらば』),自分の立場を曲げることなく,あくまでも堂々とこれを論じて(『我地位を屈せずしてこれを論じ』),いはば政府にお灸をすえて(『政府の頂門に一釘を加え』),反省を促すくらいに気構えがなければならぬ。こうして官尊民卑の旧弊を一新し,人民の権利をとりもどすことが,現代における最も緊急な重要課題であろう。」

(中略)「『世間の事業は,ひとり政府ばかりの役目ではない。学者は学者で民間において活動すべきだ。…。政府も日本の政府ならば,人民も日本の人民である。しからば,人民は政府を恐れずに近づくべきであり,政府を疑わずに親しむべきものである』という(独立自尊と官民一体の)精神を知らしめたならば,人民も次第にその行くべき道を悟り,官尊民卑の旧来の気風もだんだん消滅して,初めて真の日本国民らしい国民ができあがるであろう。それでこそ,国民は,政府の言いなりになるおもちゃではなくて(『政府の玩具たらずして』),政府の有効な刺激となり(『政府の刺衝と為り』),学術・商売・法律なども,自然と民衆自身のものになって,国民の力と政府の力とがバランスを保ち,これによってはじめて日本の独立を維持することができるのだ」[伊藤正雄訳?]

 

福沢先生のいわれる「われら民間独立の地位に立つ者」(『我輩先づ私立の地位を占め』る者)「一般人民の学ぶべき模範を身をもって示すところの人間」(『人民の由(よ)る可(べ)き標的を示す者』)とは,「わが洋学者の一派」(『洋学者流』),すなわち,福沢諭吉先生と慶應義塾の門下生らを指すようだが,現在の日本社会にこれを当てはめると,この役目は,大学教授と弁護士が担うべきであろう。

ちなみに,福沢先生は,大分県中津市(旧豊前国中津藩)のご出身だそうです。