弁護士のブログBlog
「論理上のイカサマ手品」だってぇ?
- 2018-10-30
岡口判事・分限裁判に係る最高裁大法廷決定に接して,
昔,学生時代に接した,
大阪国際空港訴訟の最高裁大法廷判決【注1】について,
(私が尊敬する)原田尚彦教授が論じられた判例評釈【注2】を思い起こした。
原田尚彦教授(東京大学)曰く
「…(最高裁の)多数意見が『航空行政権』というマジック・ワードを作り出し,その行使にあたる行為はすべてが対世的効果をもつ権力作用であるはずの空港管理作用が,ひとたび『航空行政権』と結合すると,とたんにすべての国民に服従を要求するオール・マイティの権力作用に変身するかのように立論しているのは,きわめて不可解である。
判決は,最高裁の権威をタネに,『空港管理権』と『航空行政権』が合体すると,元来いずれの権限にも含まれていなかった強力な権力が創成されるといった,『論理上のイカサマ手品』でも演じているかのようにおもわれてならない。」
【注1】「大阪国際空港訴訟」とは,周辺住民が,大阪国際空港の騒音被害の賠償とともに,航空機の夜間飛行の差し止めをもとめた民事訴訟であるが,原審の大阪高裁は,原告住民の主張をほぼ全面的に認容し,夜9時以降・翌朝7時までの飛行禁止を命じていた。これに対し,国側が上告して,原審の判決は,国(運輸大臣)の国営空港の設置管理権限という公権力の行使の阻止を求めるもので,三権分立の原則に反すると主張したところ,最高裁大法廷昭和56年12月16日判決は,「航空行政権」という法令にない権限を容認して,原判決を覆し,航空機の夜間飛行の差し止めに係る周辺住民の主張を排斥した(但し,反対意見あり。)。
【注2】原田尚彦『夜間飛行差止却下判決の論理と問題点』(ジュリスト761号35頁)