北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「心愛(みあ)ちゃん(10歳)」事件にみる,大人たちの「罪」と「無能」

先週1月30日の讀賣新聞のコラム「編集手帳」

勝ちに不思議の勝ちあり 負けに不思議の負けなし

との箴言について,

プロ野球の野村克也・元監督の言葉ではあるが,
もとは,平戸藩士・松浦静山剣術指南書にある言葉だ,
と紹介されていた。

が,「編集手帳」の執筆者は,上記言葉を引き合いに出した上で,

「◆この敗残感と悔しさは何だろう。また負けた。」
と続けた。

何のこっちゃ?,と思ったら,・・・この時点で既に,

千葉県野田市で起きた,「心愛(みあ)ちゃん事件」を踏まえての所感だったようだ。

讀賣新聞の編集者(「編集手帳」の執筆者)曰く
また一人,父親からのDVで幼児(10歳)が虐待死した。
「真冬の風呂場で冷水をかけられるなどし、救急隊が駆けつけたときには,濡ぬれた服を着たまま息を引き取っていた」という。誰からも「救いの手を差し伸べられることなく、小さな子が旅立った。寒かったことだろう。」と。

この執筆者は,
「その後の経過を見れば救えなかったのがまるで不思議なし」の根拠として,
⑴ 児童相談所が一時は保護するものの、帰宅後の約1年間、児相職員は一度も自宅を訪ねていなかった。
⑵ 「昨年秋に学校を長期欠席し、今年は始業式から姿を見せなかった」にもかかわらず,「学校と児相の間の連絡はどうなっていたのだろう」か,と疑問を投げかけていた。

が,

「心愛(みあ)ちゃん」を取り巻く大人達の「罪」と,哀しいほどの「無能」ぶりは,
上記に尽きるものではなかった。

 

昨年5月に起きた,「パパ、ママいらん」でも「帰りたい」と児童相談所で語った幼児が,両親―父親(33歳)と母親(25歳)―からの暴行による虐待死事件である『結愛(ゆあ)ちゃん』事件に学ばない「大人たち」。

社会全体が,「父」の名に値しない「鬼畜」の所業に加担しているとしか思えない。

 

1.まず,担任教師

 「心愛(みあ)ちゃん」は,担任教師に,アンケートをもとにした聞き取り調査では「口をふさいで床に押し付ける」「昨日たたかれた。頭、背中、首をけられて今も痛い」「父親から怖い言葉をぶつけられる」「頭を10回こぶしで殴られる」「母親がいない間にも背中を蹴られた」など,凄惨な暴行被害を訴えていた。

 この時点で,校長に報告して,教育委員会(教育長),児相・警察と連携して,対応を協議しなければならない。弁護士の関与は不可欠だ。
 児相での保護だけでは足りない。
 親権剥脱(しんけんはくだつ)を,真剣に検討すべきだった(民法834条)。

 

2.担任教師の上司の学校長はどうだったか?

 これは,いくらなんでも,ウソですよね? 
 「校長 石山由美子」さん!
 

 何ですか?,この念書!

「平成30年1月13日 
 栗原勇一郎 様
  親族一同 様
       野田市立山崎小学校
         校長 石山 由美子
念書

野田市立山崎小学校(校長 石山由美子)教職員一同は、「栗原心愛の一時保護に関する件」に関して通告の義務における責任について、児童復帰後は、保護者及び親族一同が安心して児童を任せられる様、具体的な対応、方法を提示し、知識、技能の限りを尽くすことを誓う。

また、今後、児童への対応等が必要となった場合、保護者及び教育委員会への情報開示を即座に実施し、協議の上決定する。

以上のことを遵守し、保護者及び親族一同に対して信頼される組織として学校作りに取り組むことを誓う。」

とあるが,・・・「アホの極致」ではないですか?

ちなみに,この方の姓名判断は何じゃいな?

仕事運が「大吉」だとぉ???

 

3.野田市の教育委員会はどうよ?

 父親(41歳)からの暴力を訴える彼女のメモを,父親に渡したんだってぇ??
 どこまでアホなの?

 

4.「頼りになるはずの」児童相談所は?

 

5.そして,母親(31歳)が,暴行関与,食事制限の疑いで逮捕された。

  ラインで報告していたんだってぇ?

 

娘に対するDVが続けば,自分へのDVが軽減される,ってか?
    その「不感症」が理解できない。

 

 千葉県弁護士会は,人権侵犯事件として,調査・検討した上で,地方自治体に対し,今後の対策を勧告をすべきではないのか。日弁連は動かないのか?
・・・それとも,弁護士会の存在意義などもはやないことを世間に知らしめるのか??

 

ちなみに,愛知県弁護士会はどうか?
私は,もはや弁護士会と離れたところで活動しているので,内情は知らないが,
昔,「児童虐待」をめぐって,次のような相談を受けたことがある。

相談者は,60歳前後の公務員(女性)だった。
「先生,聞いてください! 私の娘が大事にしている,私の孫娘を
 あろうことか,児相が『保護』と称して,娘から取り上げてしまい,
 娘にも,私にも会わせてくれません!!
 娘は,児童虐待など一切しておりません!!
 これは,母親(娘)に対する人権侵害ではないでしょうか?」と。

私は,その場で,児童虐待を専門に扱う,某大学医学部の法医学の教授に電話し,
次の如くに相談した。
「先生,お久しぶりです。今,私のもとに,
 ・・・・といった相談が来ているのですが,
 『児相に対し』,どのような対抗措置をとったらよろしいでしょうか。」と。

教授曰く「先生,その案件はダメですよ。私が取り扱った案件です。
 その母親は,明らかに児童虐待をしてます。
 重度の『揺さぶられっこ症候群』【注】の所見が認められましたから。」と。

私は,相談者に回答した。
「・・・だそうですよ。あなたの,娘に対する監督不行届の問題でもあります!」と。

(危うく,騙されるところだったぁ!!,これぞ『勝ちに不思議の勝ちあり』!!)

 

【注】『揺さぶられっこ症候群』とは,乳児をあやす際などに頭を前後や左右に大きく揺さぶり,網膜出血や硬膜下出血、クモ膜下出血を惹起させることをいう。愛情による父母の揺さぶり・あやしによって,『揺さぶられっこ症候群』になる可能性は殆どない。

 

ここにも,『鬼畜』が・・・

 

最後に,批判覚悟で書いて置きたい。

極論ではあるが,・・・

「愛」も「心」も,言葉として美しい。

しかしながら,

「愛心(みあ)」などと,「他人に読めない名前」を子につける親については,経験的に,その「心根」が腐っているか,「愛情」が激しく歪んでいるところがあると思う。

私の偏見かもしれないが。

でも,「希愛(のあ)」,「結愛(ゆあ)」,「愛心(みあ)」と続けば,偶然だけとはいえまい。