北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

ドナルド・キーンさんを偲び・・・

先日,ドナルド・キーンさんが亡くなった。

 

そこで,クイズ。
次のキーンさんの英語を翻訳せよ。
[ヒント:ある視点に気づけば,中学生レベルの『英語力』で簡単に解けます。]

① Even a thatched hut
      May change with a new owner
      Into a doll’s house.

②  The summer grasses-
      Of brave soldier’ dreams
      The aftermath.

③ How still it is here-
      Stinging into the stones,
     The locusts’ trill.

④  Gathering seawards
     The summer rains, how swift it is!
     Mogami River.

⑤  Turbulent the sea-
      Across to Sado stretches
     The Milky Way.

(正解は,ブログの末尾)

 

先日,MIWA先生が,H先生(弁護士)からのメールを横流ししてくれた。
H先生のメールには,
孫崎享氏(元外務省・国際情報局長)のブログ『ドナルド・キーンが語った事』が引用されており,

ドナルド・キーンさんの『枕草子』解釈に触発された,
孫崎氏の『春は曙』の解釈が,はからずも,五味文彦名誉教授(東京大学・日本中世史)「『枕草子』の歴史学 春は曙の謎を解く」 (朝日選書)と同じ解釈に想到したことが書かれていた。

『春は曙』は,「男女の逢い引き」の情景を念頭においた詩ではないか,と。
なかなかの慧眼だ。

キーンさんによれば,
清少納言は,「少なくとも二回は正式に結婚しているが,それ以外にも,宮中の何人かの男性と関係をもっていた。…,『枕草子』には自分の情事にあふれている部分がある。」
として,
「又,冬の夜いみじう寒きに,おもふ人とうづもれ伏して(恋人と同衾して)聞くに,鐘の音の,ただ,物の底なるやうに聞こゆる,いとおかし。…」の部分等を引用している。

(ドナルド・キーン著・土屋政雄訳「日本文学史 古代・中世篇三」中公文庫より)

このような「明け透け」「放縦な」フリーセックスの現場を描く清少納言なれば,

ご存知・枕草子の冒頭「春は曙。やうやう白くなりゆく,山際の少し明かりて,紫立ちたる雲の細くたなびきたる。」とは,
一晩中,情交を続けた男女が,
夜明けとともに一緒に見た光景を念頭に置いていた??
さもありなん・・・・,だなぁ。

儒教が輸入され,「男女間の平等も儒者によって否定された」武家社会に入る前の,

万葉時代から平安時代までの「男女平等社会」では,女性も大胆だった。

 

<クイズの回答>

①草の戸も,住み替わる代ぞ,ひなの家
( Even a thatched hut May change with a new owner Into a doll’s house.)
②夏草や,兵(つわもの)どもが夢の跡
( The summer grasses- Of brave soldier’ dreams The aftermath.
③閑かさや,岩にしみ入る蝉の声
( How still it is here- Stinging into the stones, The locusts’ trill.)
④五月雨をあつめて早し最上川
( Gathering seawards The summer rains, how swift it is! Mogami River.)
⑤荒海や,佐渡によこたふ天の河
( Turbulent the sea- Across to Sado stretches The Milky Way.)

<出典> 松尾芭蕉著・ドナルドキーン対訳「おくの細道」(講談社インターナショナル)