北口雅章法律事務所

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今回の「鵜飼祐充裁判官」の判決は,ちょっと重くないか?

名古屋地裁岡崎支部の鵜飼祐充裁判官は,
前回,準強制性交罪で立件された父親に対し無罪判決を出したことで,
あらゆるマスコミ等から「袋叩き」にあった。

ところが,今回,
同じ裁判官が,同じ罪質(処罰根拠;性的自由の侵害)の事案で,
前回から一転,豹変したかの如くに,「懲役9年」の実刑判決という「重罰」を科している。
(情状によっては,殺人でもありうるレベルの重い量刑である。)

前回の強制性交事案は,年齢・態様からしても悪質であるし,
仄聞したところでは,精神鑑定で心因反応さえも出ていたというのであるから,
実害が現実化していた,といえた事案である。それが無罪。

これに対し,今回の事案では,
「園児がなついている」のに乗じている態様自体は悪質であるが,
未だ「被害を受けた,と認識していない」というのであるから,
実害が現実化しているとはいえまい。園児の親の「今後の成長に与える悪影響の懸念」は,情状の1つとして考慮に値するが,処罰根拠(刑罰法規の保護法益)そのものではない。

女性裁判官が増えて,女子園児に対する猥褻行為に対し厳しい量刑態度をとる例が増えていることは承知しているが,上掲記事に「元保育士」とあるとおり,被告人は,懲戒免職による社会的制裁を受けており,こらから先「9年もの長期服役」となると,被告人(31歳)の家庭さえも崩壊の危機にさらされよう。

そこまで「重い」犯罪類型か???

個人的には,ちょっと…,というか,かなり,量刑に違和感がある。

ブログ読者の多くは,量刑感覚をお持ちでないであろうし,たとえ,「今後の(園児らの)成長に与える悪影響の懸念」であっても,重罰の根拠となりうるというお考えの方もみえるかもしれない。しかしながら,刑事手続が問題解決の全てではない。被告人は,上記のとおり既に社会的制裁を受けている上,もし仮に,本件で被害にあった園児が「将来」何らかの心身に異常をきたした場合には,その時点で,―本件被害との因果関係が証明できる限り―,民事裁判等で損害賠償請求ができるのであって,それによっても被害調整が図られうる性格のものである。したがって,園児の将来に関する「保護者らの漠然とした不安」や「過剰な不安・被害感情」は,10年近い長期服役の処罰根拠にはなりえないと思われる(現実には,現時点で園児らに何らかの被害者意識があれば,その記憶が時折蘇り,増幅されて心因反応を来す可能性が全くないとはいえないが,―その場合も時が忘却の方向で解決してくれるものと思われる―,まして,現時点で各園児たちに被害意識(=精神的苦痛)がなければ,「(精神的苦痛を伴わない)過去の事実」に関する記憶は忘却方向に向かうのが当然ではないか,と思われる。)。
 以上の理由から,今回の重罰判決は,先の判決で「袋叩き」にあったことの「汚名返上」「面目回復」といった動機からではないにしても,先の判決を意識した「反動」ではないか?,と疑ってしまう。

 

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(2019-04-24)「鵜飼祐充裁判長」への裁判批判を憂える  が・・・

 https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=5768