北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「アディーレ法律事務所」への懲戒処分をめぐって

先般,東京弁護士会が,弁護士法第56条に基づき,

弁護士法人アディーレ法律事務所に対し,事務所のウェブサイト上では「1カ月間の期間限定」で「着手金を全額返還する」旨のキャンペーンをしていたところ,実際には,「期間限定」ではなしに「常時」当該キャンペーンと同様の業務をしていた,という景品表示法違反の広告宣伝をしていたということを処分理由として,業務停止2月の懲戒処分を言い渡し,元代表社員の弁護士石丸幸人会員に対しても業務停止3月の懲戒処分を言い渡したこと,及び,その後の,ドタバタが新聞ダネになった。

WADASUのような旧来型弁護士としては,「アディーレ」に対しては,イロイロ申しあげたいことはあるが,商業主義的な広告宣伝をタレ流しし,弁護士でありながら,回転寿司店の企業経営を手掛けるなどの活動をした時点で,「同業者」でありながら,「同業者ではない」(100%ではないにしても,その本質は「営利目的の収益事業」だ!)と思っている。

もっとも,前記関連の各新聞社の記事を読んだ限りでは,あるいは,
東京弁護士会の公式見解
 https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-481.html
を読んだ上でも,なおそれに附随して発生することが予想される社会的影響に配慮すると,

「戒告」に止めず,法人に対し2月の業務停止とした,

今回の懲戒処分は,やや重すぎるのではないか,というのが率直な印象であった。

ところが,

今般(10月30日),下掲,ネット記事が目に入った。

アディーレ「悪質性際立つ」 東京弁護士会 広告の懲戒処分理由

「(東京弁護士会)懲戒委は21年10月から27年7月までの

アディーレの報酬総額が約268億5400万円

に上り、取扱件数も『桁外れ』で『社会的影響は極めて大きい』と判断。サービス内容変更も3回にわたるなど悪質性があるとし、『営利目的での事件の掘り起こしを無秩序なまま放置すると、違法な広告が氾濫することにならざるをえない』としている。」(産経新聞)
 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171030-00000044-san-soci
を読んでしまうと,やはり東京弁護士会懲戒委員会の判断にも一定の合理性があるように
思われた。

「獅子(しし)身中(しんちゅう)の虫」という言葉がある。
 ①仏徒でありながら、仏法に害をなす者。 ② 組織などの内部にいながら害をなす者等に使う言葉だ。

東京弁護士会懲戒委員会の面々は,「獅子身中の虫」に対し「一罰百戒」の「天誅」をくだす! という思いをもって,今回の判断に至ったものではないか,と想像される。

 それにしても,「約268億5400万円」というのは異常だ。その殆どは,「社会的弱者」から吸い上げたものであろう。従来は,あるいは,本来であれば,このような収益の何割かは,人権派弁護士(消費者問題に取り組んできた弁護士たち)の「軍資金(生活費・諸経費)」に回っていたはずのものであろうこと(この意味では,彼らが「人権派から軍資金を」奪ってきたともいえる。)を思うと,「弁護士が増えれば社会悪が確実に減る」(久保利英明「大宮ロースクールよ! 永遠に!」)という考えが,いかに安直な幻想であるかがよくわかる。

 少なくとも「建前上は」聖職者に近い存在(「プロフェッション(Profession)」といいます。)であるべき弁護士に対し,「司法改革」の前までは,全面的に禁止されていた「広告・宣伝」を弁護士会自身が許し(解禁し),かつ,日弁連(プラス「中坊」)が一致団結せずに弁護士の大量増員を許した時点で,弁護士会としては,今回のような事態の可能性を当然に予想すべきではなかったか(当時の日弁連幹部らには,それでもいいという「背信的な」新自由主義的な思想があったかもしれないが)。