北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「虐待」が凄惨であれば,凄惨であるほど・・・

「虐待」の凄惨さが際立つほど,・・・
彼女の周囲の関係者は,いったい何をしていたのか?
とつくづく思う。
学校関係者(クラス担任,校長)に
児童相談所の担当者。

彼女には,転校等で友達がいなかったのか。もっとも,
小学4年では,友達やその両親に助けを求めることは無理だろうが。
やはり彼女の両親が,いずれも「精神的に壊れている」のであるから,
「親権剥奪」以外に彼女を救う道はなかったような気がする。

それにしても,このような「壊れた両親」について,
その各両親,つまり,被害者の祖父母・計4名は,
いったい,どのような子育てをしてきたのであろうか?

傷害致死罪は,私の量刑感覚では,通常,懲役7~8年が相場だ。
殺意はなく,動機の多くは,激しい憎悪・復讐心等であろうし,
激情犯であれば,計画性もなく,被害者にも落ち度がある場合がありえようから。

が,本件での被害者は「わが子」であって,
被害者には,全く落ち度がない。

「尋常ではないほど凄惨」(判決)であれば,
先の「鵜飼判決」を破棄した「堀内判決」の事案(強制性交)でも,
懲役10年なんだから,まあ,懲役15年くらいはいくかな?と思っていたら,
案の定,懲役16年。

弁護団は,いったい,どのような弁護方針のもとに弁護活動を行い,
どのような量刑を獲得目標としていたのか?
被告人は,反省・悔悟をする素養,「罪の意識」が,
そもそも欠落がしてしまっていて,
弁護士が反省・悔悟をうながすことすら困難な事案だったのではないか?

少なくとも,宣告刑(懲役16年)をみる限り,弁護側の情状弁護により,情状酌量があったようには見受けられない。

この種の事件で,私が弁護士として,弁護団に望むことは,
「犯意の形成過程と事件の背景事情」を明らかにすることに尽きる。
そのために,被告人及び親族等からヒアリングを行い,被告人が育った家庭環境・学校環境(未成年時代)・職場環境(成人後)とその問題点・病理構造を明らかにすること,具体的には,被告人の「規範意識の欠落」を生じさせた精神的病理構造について,これを歪ませた,被告人自身の両親の育児方針(あるいは,その欠陥)と,その両親自身がどのような育てられ方をしたのかを,親子3世代まで遡って究明して,その問題点を浮き彫りにし,それと同時に,その社会的背景(被告人が家庭内・職場等で,どのようなストレスを抱えていたのか)を明らかにすることだ。

しかしながら,このような弁護活動は,弁護人=弁護士に「経済的余裕と熱意・教養」がないと期待できるものではない。

なお,事件の概要については,私の過去のブログ(2019-02-07)
『「心愛(みあ)ちゃん(10歳)」事件にみる,大人たちの「罪」と「無能」』
に,覚書メモで,整理してあります。