北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

三島由紀夫の「熱量を体感」してきた

 

懐かしい900番教室

「私は諸君(東大全共闘)の熱情は信じます。他のものは一切信じないとしても、これだけは信じるということを分かっていただきたい。」
・・・ということは,言い換えると,
「私は諸君の『言葉』は信じません。空理空論に過ぎないから。」
ってことになるわな。
確かに,彼らの学生運動は行動を伴っていたが,三島に向けられた彼らの言葉は,表面的な意味が一見高尚そうに見えても,論理的な脈絡が不明だったり,中身が空疎であったり,・・・・???。

三島が,東大全共闘の存在価値を認めていたとすれば,
ただ一点,
「私は今までどうしても日本の知識人というものが、思想というものに力があって、それだけで人間の上に君臨しているという形が嫌いで嫌いでたまらなかった。諸君がやったことの全部は肯定しないけれども、ある日本の大正教養主義から来た、知識人のうぬぼれというものの鼻をたたき割ったという功績は絶対に認めます。」という点において,ではなかったか。

 

そして,彼は,「言霊」を残し,去って行った。

 

三島の頭の回転の速さに,改めて感服するとともに,
世の中のことを知り尽くした,早熟の作家が,
ユーモアをもって,若者達を「優しく,いたぶる」という感じの討議だった。
大江健三郎と自分の違いをサラリと解説したくだりは面白かった。

あのとき,三島は,44歳。
既に連作「豊穣の海」を書き上げており,
実は,既に割腹自殺のシナリオをも,頭の中で思い描いていたような気がした。