北口雅章法律事務所

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「バカ」とは何か?

私は,子ども達に,
「『バカ』に対し『バカ』と言ってはいけない」と教育してきた。
理由は,三つある。
第一に,『バカ』という言葉は,相手の『人格』を傷つける。
第二に,『バカ』に対し,『バカ』といっても,通じない。
第三に,他人を『バカ』といえるほど,お前は賢くないし,
『バカ』という方が,『バカ』だということもありえ,
『バカ』は『自分の鏡だ』と思う謙虚さこそが美徳だからだ。

が,私は,裁判で,敗訴判決を受けると,
依頼者の前では,悲憤慷慨,
「この裁判官は,『バカ』だからしかたがない。」
と断定的に弁解する。が,ここでいう『バカ』という言葉には,
裁判官に対する「人格的」非難を,含まない。
ここでいう『バカ』とは,裁判官として通常期待される能力に欠ける,
すなわち,『洞察力に欠ける』という意味なのだ。
したがって,一言で『バカ』といっても,
文脈によって,その本質は,千差万別だ。

ところで,『バカ』の意味・意義について,
これを近代史的に考察すると,
『知識』や『知性』の対局にあるもの
を『バカ』と観念してきたらしい。
そして,近時,『バカ』が蔓延るようになってきた。
われわれの世代の人間(近代人)は,誰しも,思うところだ。

中日新聞の上掲・書評を読んで,
前記のようなことに思いを巡らせた。
あまり面白そうな本とは思えないが,
著者の時代認識には共鳴でき,書評自体は笑えた。