北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「オウム真理教」関係者の死刑執行について

今般(平成30年7月6日),
麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚ら7名のオウム真理教関係者の死刑が執行された。

私自身は,リベラル・反骨・公正を宗として,物事を是是非非で判断することにしており,このブログでも,そのような考えのもとに言いたいことを述べているつもりであるが,ブログ読者の中では,私のことを「左翼」にして「死刑廃止論者」であるかの如くに誤解される向きがあるようだ。

しかしながら,私自身は,決して,「左翼」ではないし,「死刑廃止論者」でもない。

一連のオウム真理教関係の犯罪事件についていえば,教祖である松本智津夫死刑囚が,「万死に値する」ことは自明であると思うし,私個人としては,坂本堤弁護士一家殺害事件の実行犯である,早川紀代秀死刑囚,新実智光死刑囚,及び中川智正死刑囚は,その罪状だけで,死刑に値し,死刑執行もやむをえない,という考えである。

この意味で,「死刑」と聞いただけでアレルギー反応を起こす弁護士とは信条を異にし,一線を画す。したがって,日弁連や単位弁護士会が,あたかも弁護士全員が死刑廃止運動に賛同しているかのごとくに,死刑執行に抗議する旨の会長声明を出すことには到底承服できない。

それはさておき,

それにしても,今般の死刑執行は,

計算された絶妙のタイミングに,予想どおりの「選考」(死刑執行者のリストアップ)が行われたように思われる。

「計算された時期」というのは,

「平成」年間の内に事を片付けたい(始末したい),特に新天皇が即位されるといった,めでたい年であるべき来年度には持ち越したくない。そうであるならば,オウム真理教関係者の特別指名手配を受けていた最後の1人,高橋克也の無期懲役の確定(本年1月25日)を経て,オウム真理教関係・死刑囚らを東京拘置所から,各地の拘置所に分散させた後は,死刑の多数・同時執行が不可能ではなかった。ところが,即時・多数・同時執行を敢行するうえで,障害となったのは,やはり,ワールドカップ・ロシア大会での,日本代表チームの活躍ではなかったか。日本代表チームが活躍している間は,多数・同時の死刑執行を敢行してしまうと,それに対する国際的批判が湧き起こり,その結果,日本代表チームのイメージを悪化させるなど累を及ぼす危険性が全くないわけではなかったものと思われ,万が一,そのようなことがあっては,アベ=上川法務大臣に非難が集中するので,日本代表チームが敗退するまでは,死刑執行できなかったのではないだろうか(と想像する。)。

上記のとおり,教祖坂本堤弁護士一家殺害事件の実行犯3名の死刑執行はやむをえないところであり,残る井上嘉浩死刑囚は,諜報担当・総合調整役として,土谷正実死刑囚は,化学兵器(サリン)の製造者であり,遠藤誠一死刑囚(京都大学大学院医学研究科にてウイルス学・遺伝工学を専攻)は,細菌兵器・覚せい剤等の製造者として,それぞれ死刑執行もやむをえない,というべきであろう(但し,井上嘉浩死刑囚については,坂本弁護士一家の殺害に関与しておらず,第1審では,井上 弘通裁判長が無期懲役を宣告していたとのことなので,なお死刑執行を見合わせる余地があったのかもしれない。)。

ところで,

.坂本堤弁護士一家殺害事件の実行犯のうち,唯一の例外として,死刑執行だけは,できれば回避させてやりたい者がいる。それが,岡崎一明死刑囚(昭和35年10月8日生)だ。
彼には「自首」が成立する。自首の動機はとてもほめられたものではなかったが,彼が事件全体を自白しなければ,オウム真理教関連事件の真実解明がどの程度できたか疑問であるし,被害が拡大していた可能性も否定できない。極度に劣悪だった,彼の養育環境も酌むべき要素である。
そう思って,今回のニュースを知って,直ぐに死刑執行者リストを確認すると,やはり岡崎は,今回の死刑執行者リストからは外されていた。

もし彼が,普通の家庭のもとで育てられていれば,それなりの画家になっていたかもしれない,と思うと,死刑執行だけは勘弁してやってもよいのではないか,と思えなくもない。

画・岡崎(宮前)一明「厳冬入山」

 

なお,
私の関連ブログ 「オウム真理教と,ある哲学者のこと」 も読んでネ。
https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=1670