北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

まるで集団リンチ!? 「Y裁判官への懲戒」の感想 *追記

Y裁判官に対する懲戒が,官報で公表されている。

Y判事は,わたしの目からみて,決して出来の悪い裁判官ではない。
否,温情があり,私が好きなタイプの裁判官だ。

昔,弁護士登録してまもない時期,こんなことがあった。
私が,破産管財人に就任した破産事件の管財物件(旧代表者の邸宅)を,
エセ右翼の親分が不法占拠していた。

私は,破産宣告と同時に,その右翼の親分に対し,
問答無用で「出て行け!」と内容証明郵便を出したが,
そのエセ右翼は立ち退こうとしなかった。
そこで,私は,即座に,名古屋地裁の某支部に,立ち退き請求訴訟を提起した。
(注:明渡断行の仮処分をやらなかったのは,私が未熟だったから。)

そのエセ右翼には,T弁護士が訴訟代理を受任したが,
すぐに審理が熟したと考えられたので,私は,口頭弁論で裁判官に対し,
「すぐに終結して,判決をください!!」と強く迫った。2月末のことだ。
ところが,その裁判官(H)は,訳の分からない屁理屈を持ち出して,
1回期日を続行させた。
あとから考えると,さては,アヤツ(H)は,
「エセ右翼の親分からの逆恨み」を恐れたのか?
と不審を抱かざるを得ない状況変化が起きた。
そう,その裁判官(H)は,期日の続行(延期)後,
転勤してしまい,姿を消していた。厄介な事件から逃げていったのだ。

そして,そのH裁判官の後釜として,
敢然と,そのエセ右翼に対し手厳しい判決を書いてくれたのが,Y裁判官だった。

勿論,Y裁判官が,名古屋高裁在任中も,いろいろ御世話になった。

Y裁判官の懲戒事由は,判決書の原本に基づかずに,判決を言い渡したもの,
という民訴法252条違反だ。

しかしながら,一般論として,
「私は,一度も,民訴法252条違反をしたことがない!」
と胸を張っていえる裁判官が,いったいどれほどいるであろうか。

全裁判官が,全ての事件について,
「判決書の原本に基づいて」判決を言い渡している,というのであれば,
判決言渡直後に,書記官室に判決書を受け取りに行って,
「まだ謄本がでてきおりません。謄本ができたら連絡しますから,
 今日はお引き取りください。」と言われ,
2,3日も待たされることなどあるまい。
(私は,そのような経験を少なからず持つ。)

が,Y裁判官の場合は,民訴法252条違反の判決言渡を「36件」も貯めてしまった,
とみえて,善意に解釈すれば,心ない弁護士から突き上げをうけて(?),
主任書記官も,かばいきれなかったのであろう。
強引な和解を勧告せずに,審理を丁寧に,丁寧にやりすぎて,
事件を貯めてしまったのではないか。

しかしながら,
今回の裁判官分限事件の「名古屋高等裁判所特別部」の構成員に,
藤山雅行判事の名はない。
当該特別部の構成メンバーの面々が,私にくだした著しく不本意な判決の数々
を思い浮かべると,
「名古屋高等裁判所特別部」による,Y判事に対する分限裁判は,
まるで,司法行政機関による集団リンチの様相を呈するように思える。

心情的には,
憲法76条2項(特別裁判所の禁止)に抵触していないか?
憲法78条第3文「裁判官の懲戒処分は,行政機関がこれを行ふことはできない」
に抵触しているのではないか? と思えてしまう。

 

*追記 

 裁判所の「掟」は厳しいね

 先日,Yoshiくん(確定死刑囚)に会いに,名古屋拘置所を訪れた際,

 昔,「不運な」不祥事で「依願退職」させられた元判事のお顔を,久しぶりに「待合室」でお見かけした。

「お久しぶりですね。お元気ですか。」と声かけしたら,超スジ悪の国選事件(詐欺被告事件の控訴審)の記録を抱えて,嘆いてみえた。

 Y元判事も,同じことやるのかな。いくら法曹資格があるとはいえ,この年での転職は辛い。どこかいい就職先がみつかるといいが。