北口雅章法律事務所

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公権力は,公共事業でも,表現内容を「全く」規制できないのか?

 

地方公共団体(県・市)を構成員とする主催者が芸術企画展に際して,
公的資金を使って,
公共施設(県立美術館)を使用して,
作品展示を行う場合であっても,
共同主催者たる地方自治体の長(知事・市長)は,
表現内容に口出しできないのか?

愛知県知事の大村氏,及びその翼賛的組織(検証委員会)は,
表現内容には,全く口出しできないし,
政治的に偏向した展示に「待った!」をかけた河村市長の発言が,
「(広い意味での)『検閲』」に当たるという。

だったら,
大村知事は,天皇陛下の写真をバーナーで燃やし,その灰を靴で踏みつける作品や,ナチス=ドイツの「ハーケンクロイツ(鉤十字)」を「礼賛」する作品が含まれていることを「事前に」知るに至った場合でも,これを放置・放任するのであろうか。

河村市長からの,上記趣旨の「公開質問状」に対して,
大村知事はその「芸術性」については,回答を拒否し(「私個人としての『芸術的見解』については,回答を控えさせていただきます。」と),その一方で,その「暴力性」「反社会性」についても,「客観的に評価することは非常に困難です。」と言って,その「暴力性」「反社会性」を明確に認めなかった。

大村知事の上記論旨からすれば,
「ハーケンクロイツ(鉤十字)」を「礼賛」するネオ・ナチズムの「政治的プロパガンダ」が露骨に表明された展示作品であっても,それが,如何に「ユダヤ人」の人々の心を深く傷つけるものであろうが,その「暴力性」「反社会性」についても,「客観的に評価することは非常に困難です。」という評価になるはずだ(もっとも,大村知事は,「愛知県知事として」桜井誠氏らの企画展「愛知トリカエナハーレー」で展示された人種差別的な作品について,「ヘイト」だと断定的に批判しているので,その言動の一貫性については,重大な疑問があるが。)。

最近,ナチス・ドイツのヒトラーが,自身の政治的支配力の強化を目的として,いかに「政治の美学化」(政治の視覚化,アート化)を手段として,人々の「頭の空洞化」を促進し,それを「悪魔的に」活用したか,を論じた本を読んだ。
これが,松田行正著「RED ヒトラーのデザイン」だ。

この本には,いろいろ仕掛けがある(下掲参照)。

大村知事や,彼が組織した「翼賛的」な検証委員会の委員(大村知事の迎合・追随者ら)は, 「芸術」に藉口した政治的プロパガンダの恐ろしさ,「ハラスメント」性に対する「教養」をもっているのか?,そのような教養を前提に,検証委員会としての結論を出したのか? 甚だ疑問である。

2016年10月,アイドルグループ「欅坂(けやきざか)46」が,ナチス風の衣装をまとったことで,ユダヤ系人権団体(SWC)から猛烈な抗議を受けて,謝罪を余儀なくされたことは,われわれの記憶に新しい。

 

大村知事は,「当然に予期される」このような紛糾事態を招いても,すべてを「芸術監督」の責任に転嫁し,自らは「監督責任を問われない」と強弁し,共同主催者として制止しようとした河村市長の抗議を「検閲」だといって排除されるのであろうか???

このような人物が,「愛知県知事」として相応しい人物か? 
すべての愛知県民に,よくよく考えてもらいたいものだ。

・・・というような,私の問題意識は,(当然のことであるが)名古屋市の検証委員会では,全く反映させることができない。すべての検証委員は,当事務局が提示した客観的な論点について,名古屋市当局から「独立」し,公正中立な第三者的立場から,厳正に審査・評価されるシステムとなっているからだ。