北口雅章法律事務所

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「ローマ法」のお勉強(復習)

片岡輝夫教授(東京大学法学部・ローマ法)によれば,
「ローマ中央政界の一貫したやり方」は,「(征服都市の)原住民中の〈親ローマ的な〉有力者を支配組織の末端に組み入れて在地(征服都市)の支配を固めようとする」やり口である。Antium(ローマ初期の市民植民市)の場合もそうだった。ローマは,原住民の「軍用船の没収」と「海上活動の禁止」を最低点の条件として,検閲官(censor)が,その裁量のもと,原住民を「ローマ市民たるにふさわしいか」か否かで選別し,〈親ローマ的な〉有力者ないしその配下だけの編入を行い,その余の原住民を排除する,一個の支配組織を構成していたかくて,軍事的に制圧された植民市は,「ローマの砦」としての機能を果たしえた。
(片岡輝夫 「Livius VIII,14,8 とX,20,10 : ローマ初期の市民植民市Antium の社会構造-その一, VIII,14,8 の一解釈-」『古代ローマ法研究』》1986)

賢明なる私のブログ読者は,ここで私が何をいいたいか,お見通しであろう。

世間の集中砲火を浴びても動じない,辞めない「黒川・東京高検検事長」と,
アベ・ベッタリに機械的に動く,バカ丸出しの「法務大臣・森雅子」氏の所行・態度をみていると,上掲「ローマ中央政界の一貫したやり方」は,アベ政権における「検事・定年延長問題」にも,そのまま当てはまる。

「アベ政界の一貫したやり方」は,「検察組織の中の〈親アベ的な〉有力者を支配組織の末端に組み入れて『検察組織の支配』を固め,その弱体化を図ろうとする」手口である。検事長定年延長の場合もそうだ。アベ首相=菅官房長官は,検事長の「アベ首相の息のかかった議員・政界人に波及する独自捜査権の没収」と「森友・文書改ざん問題,さくらの会問題の捜査の禁止」を最低点の条件として,内閣人事局長(censor)が,その裁量のもと,検察官を「アベ・ベッタリ型の平目検事」か否かで選別し,〈アベ・ベッタリの〉有力者〈黒川検事長〉ないしその配下の「平目」だけの編入を行い,その余の「正義の」検事を排除し選別する,かくて,権力的に制圧された検察組織は,「アベ政権の砦」としての機能を果たしうる,一個の支配組織として構成されることを目論んでいるものとみて矛盾がない。