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円空仏入門11「違和感を覚える円空仏 その2」

違和感を覚える円空仏といって,真っ先に思い浮かぶのは,
地元関係者からは怒られるかもしれないが,
やはり中山寺(三重県伊勢市勢田町)所蔵の護法神である。

違和感を覚えるのは,「首がある」ことと(円空作の仏像には,本像を除き「首(頸部)がない」),個人的な美的センスからすると,鑿さばきが円熟からはほど遠い思われることにある。

(長谷川公茂「円空 微笑みの謎」中経出版)

 

が,結論的には,円空の真作であることは証明されている。
第1に,長谷川公茂前円空学会理事長撮影の赤外線写真から,円空特有の背銘・梵字が確認されているし,第2に,中山寺には,他にも同時期に奉納されたみられる不動明王像と,三面大黒天像を所蔵しており,これらの諸像も円空の特徴が観察されるからである。

(以上,「円空学会だより」季刊第32号より写真引用)

 

 以上の観点から,中山寺所蔵の円空仏は,延宝初期の作品として貴重な文化財かとは思うが,やはり従来の伝統的な作風・技巧を超越した,新たな円空特有の作品としては,試行段階の習作にとどまり,私自身は,円空特有の異形化・抽象化が完成するのは,延宝4年以降,いわゆる荒子観音時代を経て,いわゆる白山託宣を受けて以後であったと考えるものである。

 ところが,中山寺所蔵の前掲・護法神像に対する梅原猛先生の「激賞」ぶりは半端ではない。曰く「とくに護法神がすばらしい。」,「中山寺の護法神はユーモアと慈悲の護法神であるといえる。」,「…この護法神は,まるでピカソの作った彫刻のようにも見える。円空を現代の彫刻家と思って嫉妬を覚えたフランスの彫刻家がいた話を書いたが,この仏像を観れば,それももっとなことと思われる。」と(「歓喜する円空」265-266頁)。これはいくらなんでも,持ち上げすぎだろう。「フランスの彫刻家」が,「中観音堂(岐阜県羽島市上中町)の」円空作諸像をみて,「ロダン」を思い浮かべた,という話ならわからんでもないが。

ちなみに,円空仏ではないが,豊臣秀吉が,念持仏として,三面大黒天をもっていたことは有名であるが,秀吉の菩提寺「圓徳院」も,秀吉にあやかろうとしているもよう。