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「舌を出す」円空仏(ENKU)

円空仏の最大の特徴は,「癒やしの微笑」である。

 

ところが,「歯と舌を出して」笑う円空仏がある。
像の背面に,延宝3年(1675年)造の墨書のある,
奈良県大和郡山市にある,松尾寺の役行者像だ。

礼拝対象としては似つかわしくないし,たとえ神仏ではなく,「修験道の始祖」の像であっても円空仏としては違和感があり,偽作であって欲しい,と思ったりもするが,どうやら円空作(当時44歳)であることは,間違いなさそうだ。

その翌年である延宝4年以降,円空(当時45歳)は,
荒子観音寺(名古屋市中川区)に逗留して,
「舌を出す」仏像を彫っているからだ。
円空が「舌を出す」仏像を造顕している以上,「歯を出している」からといって,
遺憾ながら,円空仏ではない,とはいえないであろう。

 

延宝8年(1680年)以降,円空(当時48歳)は,
関東へ巡錫の旅に出るが,この折にも,
「舌を出した」仏像を彫っている。
これが小渕観音院(埼玉県春日部市)の聖観音像だ。

 

やはり,「舌」や「歯」は,「品がない」ので,出さない方がよい。
「円空らしい」といやあ,まあ人柄的には,「円空らしい」が。