北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

破顔一笑,思わず相好(そうごう)を崩(くず)した部総括裁判官

の顔を初めて見た。

今日,某地裁・医療集中部でのラウンドテーブル。

拝むような目つきで,
「…で,先生の方はどうですか。和解に応じていただけないでしょうか。」
との問いに,
「わかりました。(部長の顔を立てて)和解に応じましょう。」
と答えた私。

その瞬間ホッとした!という感じで,部長裁判官の顔が思わずほころんだ!!

和解条項を双方確認して手続が終了し,裁判官らが部屋を出た後,
「よっぽど,嬉しかったんでしょうねぇ」と書記官に声をかけると,
書記官も,大きく肯(うなず)いた。

医療訴訟の場合,
裁判官が判決を書くとなると,膨大な精神的エネルギーを消耗する。
特に,医師の医療過誤が明白だと内心思っても,患者側勝訴の判決を書くのには,
裁判官にも,相当な勇気が必要となるようだ。
控訴審では,
医療側から新たな専門的証拠が提出されたり,
保守的で,医療側に肩入れした高裁の裁判官に当たったりなど,諸々の原因で,
自らくだした判決が覆される危険を常に覚悟せざるを得ないからであろう。

私の手掛けた上記医療裁判は,医療側の過誤が明らかだと思われる事案で,
裁判所から人証調べに入る前に和解勧告があった。
(勿論,私が手掛ける医療裁判は,医療過誤が明らかだと思われる事案ばかりだが。)

が,損害認定が「渋い」左陪席が査定し(?),裁判所が提示した金額は,
当方の「勝訴(医師の有責)を前提」とする金額であったとはいえ,
請求額に比べると著しく見劣りし,
正直なところ,ガッカリするような金額だった。

「これじゃあ,ダメです。当方依頼者に顔向けできませんよ。」
と言って,和解を断る私。
「でも,先生。先生側の勝訴を前提とする和解金額ですよ!」
と言って,食い下がりつつ,なおも和解に拘る部長裁判官。
「でもダメです。交通事故の裁判じゃないんだから。医療裁判の場合,
 判決によって医師に『ツチ』がつかないだけでも,病院・医師にとっては,
 相当なメリットです。当方は,これまでの裁判の準備に相当エネルギーを
 消耗してますからね。最低でも×××万円は払ってもらわないと。」
と,強気に断る私。
「わかりました。では,支払金額×××万円での和解ということで,
 被告側(病院側)にもう一度検討してきてもらいましょう。」
ということで,一回期日が延びる。

(約1ヶ月後の和解期日)
今度は,病院側が「×××万円での和解」を断ってきた。
「裁判所の当初の和解案を蹴るとは何事か!?」
というのが病院側の言い分であろう。
「じゃあ,しょうがないですね。粛々と判決を書いていただきましょうか。」
と言って居直り,判決の方向で手続を進めるよう要請する私。
「まあ,そうおっしゃらず,×××万円での和解を検討してくださいよ。
 当事者双方に改めて×××万円での和解を勧告します。
 次回までに検討してきてください。」
と言って,なおも和解の希望を捨てない部長裁判官。

そして,約1ヶ月後に迎えた今日,(依頼者の了解を得て)和解に応じた私。

やや不本意な金額ではあったが,
勝訴的和解にして,裁判所からの当初の勧告額よりも多少とも上積みされた訳だし,
部長があれだけ喜んでくれたんだから,
まあ,これで「結果オーライ」と思わないといけないのであろう。

 

どうも,私が手掛ける裁判は,
裁判所にとっては,「判決を書くのが面倒だなぁ」
と思われる厄介な「泥沼」事案が多いようで,
裁判所から「判決は勘弁してくれ!」と言わんばかりに,
和解を懇願され,激しく譲歩を求められるケースが少なくない。