北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「一宮市で円空仏新発見」?

今日(3月30日),円空学会から「円空学会だより」がとどいた。
「一宮市で円空仏新発見」と題して,
小島梯次先生(理事長)と前田邦臣さん(常任理事)が,
愛知県一宮市萩原町の小祠堂
円空作の「薬師如来」(以下「本件薬師如来」という。)が「新発見」された旨の記事を紹介されていた(撮影者:前田邦臣さん)。

顔の表情は,延宝期(円空が,荒子観音寺での造顕活動を経て,白山神から御託宣を受けた前後)の風貌に近く,右手の大きな「施無畏印」は,無量寺(愛知県大治町)の阿弥陀像を彷彿とさせることから,円空が関東方面に向かう直前頃の造顕ではないか,とも思われる。

(無量寺・阿弥陀像)

が,正直なところ,直観的には,本件薬師如来には,私には,どうも違和感を払拭できず,

なお「模作」の可能性が否定できないように思われる。

第1に,気になるのが,口元である。
 本件薬師如来の上唇は真ん中付近で肉がやや薄くなっており,下唇が真ん中付近でやや持ち上がって,W字状に彫刻されている。このような円空仏の例は,管見では,本例で初めておめにかかる。

第2に,左腕でもたれた薬壺は,薬師如来を特徴づけるものであるが,単なる線刻にすぎない。円空が薬師如来を造顕するときの薬壺は,もっと立体的なものであり,このような平板な線刻には,違和感を覚える。

第3に,本件薬師如来の足元が朽ちていることにも違和感を覚える。虫に食われて変形した部分もあるであろうが,正面下の凹みが元々の朽ち木の形状を反映しているように思われ,円空がこのような朽ち木の凹みを足元に据えるであろうか。

第4に,気になるのが背面の線刻である。

この背面で彫られているは,明らかに,蛇(龍神の化身)であるが,私には,「鎌首のように盛り上がった(蛇の)胴体」の上に彫られた五角形は,別の蛇の頭であり,蛇が別の蛇にまとわりついて,首元を中心に締め上げているように見える。この造形は,これ自体興味深いものではあるが,このような動物の線刻は,円空仏の特徴にはなかったものではないだろうか。

以上のことから,現時点では,なお「模作」の可能性を否定できないように思われる。