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円空は,龍頭観音を造顕しなかったか?

通説的見解によれば,円空が頭上に龍を彫っている像は,
46体が遺されているが(毘沙門天は別だろうが),
うち5体に「善女龍玉と墨書があるにもかかわらず,
「龍頭観音」の墨書された尊像は一体も遺されていないことから,
頭上に龍が彫られた尊像は,全て「善女龍王」だと理解されている
(小島梯次著「円空入門」73頁)。

 

確かに,頭上に龍が載せられた尊像は,
龍の化身(竜神)と考えられるので,「善女龍玉」と考えられる。

では,円空は,「龍頭観音」を造顕しなかったか?

結論からいうと,埼玉県越谷市の安国寺所蔵の観音は,
右裾脇に置かれた水瓶に柳の小枝が水差されていることから,一般には,「楊柳観音」と理解されているが,左裾の下に龍頭が彫られていることから,「龍頭観音」の要素も含むものではないか,と考えられる。

 

上掲観音像について,丸山尚一氏は,
「円空全体像のなかでも最も特異な像」と評しておられる。
(新円空風土記139頁,円空風土記86頁)
この像の台座に相当する裾部分には,のみならず,右裾に
中央に魚二匹,左裾に水鳥が二羽,彫られているからである。

これらの動物計6匹についても,荒子観音寺の「青面金剛神」と同様,
「六譬(ろっぴ)」を意識したもののように思えてならない。