北口雅章法律事務所

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日本国憲法の理想主義と,国際社会の現実

日本国憲法は,「崇高な理想」主義に貫かれている。
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し,
「いずれの国家も,自国のことのみに専念して他国民を無視してはならない」という「政治道徳の法則」に従うことは,「各国の責務であると信ずる以上,日本国憲法前文)との前提のもとに,戦争と武力の行使を放棄し(9条1項),戦力不保持の原則を確認し,国の交戦権を否認している(9条2項)。

東京大学法学部では,伝統的に,以上の理想主義と歴史的経緯を前提に,文言に忠実な解釈として,自衛隊は「違憲」であるという講義を受ける。また,個別的自衛権は合憲であっても,「集団的自衛権」は違憲であると教えられる。

理想主義・理想論を貫く,東京大学法学部・卒業生の多くは,如上の東大教授の学説について,憲法解釈論として,その妥当性を承認するとともに,「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」ためには,憲法9条の墨守こそが必須であると考え,「護憲派」的立場から,憲法改正に強硬に反対する傾向にある。

私も,かつては,そうだった。

だが,
昨今の国際情勢をみるにつけ,
日本国憲法の理想主義が,その前提とする諸外国の「信義遵守への信頼」を瓦解させるに足る裏切り行為の数々を前に,如何に「現実離れ」した理想論であったか,と考えを改めざるをえなくなってしまった。

東大法学部の憲法学者が説く学説は,
伝統的に8月革命説である。具体的には,日本国が,1945年8月14日,ポツダム宣言(無条件降伏)を受諾した時点で,日本国の主権が,天皇から国民に移行し(革命),日本国民が,その総意に基づいて自律的に日本国憲法を採択したとされている。

しかしながら,その「8月革命」が起きた直後にも,上記理想主義が現実離れしていたことは,「日ソ不可侵条約」を公然と無視した,スターリン政権下の旧ソ連軍による,北方領土の侵略と,多くの日本人の拉致・シベリア抑留により,既に明らかであった。

 

近時は,島根県内にあった「竹島」では,韓国の武装警察が常駐し,実行支配を強化しており,日本国政府は,韓国による領土侵略行為に対し,何ら警察権も行使できない状況にある。

 

次いで,問題の焦点となっているのが「尖閣」諸島の問題だ。

(外務省・ホームページより)

中国共産党は,その自国の「核心的利益」として,①チベット,②ウイグル,③香港,④南シナ海,⑤台湾,及び⑥尖閣を掲げ,これらが自国の領有権の範囲内にあるものと主張している。そして,既にチベット(①)とウイグル(②)では,大規模な人権弾圧・大量虐殺(ジェノサイド民族浄化ないし同化政策;強制不妊)が行われており,香港(④)では,民主活動家らが逮捕され,中国政府に対する反逆、分離、扇動、転覆を禁止する内容の「香港国家安全法」が制定された。
 次は台湾(⑤),尖閣(⑥)がターゲットとして狙われていることは自明だ。尖閣(⑥)の実効支配開始は,早ければ,北京五輪がボイコットされた時点,遅くとも,北京五輪が終わった直後ではないか,とみられている

 このような独裁的な全体主義・共産主義国家による,露骨な非人道的・反民主主義・反自由主義的な暴力支配が現実化しているなかで,たとえ自衛目的であれ,中国との交戦を回避し,中国の事実上の属国化を回避し,日本が民主主義国家であり続けるためには,日本国憲法の理想主義(武力放棄,交戦権放棄)を貫くよりも中国をジェノサイド認定した米国・英国との同盟関係を強化し,自ら前線に立って集団的自衛権行使の容認し,その覚悟を国際社会に示す必要があるのではないか,。。。と,憲法記念日にツラツラ考えた。