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円空は,興福寺を訪ねていたのではないか?

円空(江戸時代の修験僧・仏師)は,中観音堂(岐阜県羽島市)に特異なポーズ(像容)の不動明王(木像)を造顕している。今まさに宝剣を抜こうとしているポーズだ。

 

不動明王の像容は,周知のとおり右手に倶利伽羅剣を握って立て,左手に縄(羂索)をもつのが一般的である。不動明王は,真言宗では,大日如来の化身で,右手の剣で,邪悪・暗愚な心を断ち切り,左手の縄で,邪悪・暗愚な心を縛りあげるとされている。

ところが,円空が中観音堂に残した不動明王は,大胆に体を右にひねり,倶利伽羅剣を抜こうとするポーズをとっているようにみえる。このような特異なポーズには,何らかのヒントとか,モチーフがあったのではないか?と,以前から気になっていた。が,今日,偶々,奈良を訪れる機会があり,円空の不動明王の着想の由来を知ることができたような気がした。

今日,めずらしく娘が「奈良に行こう」というので,家族で,十数年ぶりに奈良に出向いた。「名古屋からの日帰り」となると,我が家の場合,名古屋から新幹線で京都に出向き,京都から近鉄で奈良に向かうことになるが,これに「私の趣味」という条件が組み合わさると,散歩コースの候補は,自ずと三つに絞られる。第1は,南下して法隆寺をめざすか,第2に,北部中央の薬師寺・唐招提寺をめざすか,第3に,北部東側にある東大寺・興福寺をめざすかである。が,家族連れとなると,伽藍・仏像だけでは偏ってしまうので,やはり,やや遅めの紅葉のみられる若草山に,鹿もいる東大寺・興福寺コースを選択することになった(実は,十数年前も同様だった。)。
 ところが,今回は,非常にラッキーなことに,興福寺では,五重塔を「特別公開」中で,内部(初層=1階だけだが)を観覧できた。塔内部では,四方に,薬師如来三尊像,釈迦如来三尊,阿弥陀如来三尊,及び弥勒如来(?)三尊が安置されていた。

 そして,国宝館で,興福寺所蔵の数々を観覧した後,売店で,記念に多川俊映ほか監修「興福寺のすべて」(小学館)を購入したところ,興福寺・東金堂に安置されている十二神将の中の「波夷羅(はいら)大将像」の写真が出ていた。
思わず,円空は,コレをみて,中観音堂の不動明王のポーズにつき,ヒントを得たのではないか,と思った。円空は,法隆寺を何度か尋ねているので,興福寺に立ち寄ったと考えても矛盾はない。