北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

円空が刻した「不動明王」は,何故,眼が飛び出ているのか?

先日購入した古本「微笑の円空仏を訪ねる旅」が気に入り,特に,千光寺(岐阜県高山市)所蔵の不動明王の拡大・横顔写真が気に入り,その魅力の一つに「木目の暖かみ」を感ずる旨のことをブログに書いた。

ところで,上掲・写真に見入っていると,どうしても気になるのが,不動明王の眼が「出目金(デメキン)」のように浮き出ているように彫刻されていることである。上掲・写真のごとく,「目玉」が極端に浮き出ているのは何故か。あるいは,ひょっとして,実は,目玉の上半分は,「目蓋(まぶた)」であって,下半分は,「伏し目がち」の目を顕したのではないか?と思い,ちょっと考えてみた。

 

例えば,徳林寺の不動明王は,「目玉」全体が平板に浮き出ており,目の範囲は,自ずと明らかだ。。

 

同様に黒目が墨書された「十二神将・戌像」(長福寺)の目や,荒神像(音楽寺)の目の場合も,目の範囲は明らかで,意図的に「目玉」全体を浮き上がらせている。

十二神将・戌像」(長福寺)

 

荒神像(音楽寺) 側面

 

荒神像(音楽寺) 正面

 

ところが,これに対し,
多くの不動明王の場合は,どうであろうか。

尻高地蔵堂の不動明王

 

鳥屋市不動堂の不動明王

 

庄中観音堂の不動明王

両眼が,ドングリ状の紡錘形でありながら,その左右の中心線が「稜線(りょうせん;山の峰が続く形状)」になっている。そして,この目玉の形状によって,上半分が相対的に白く見え,目の下半分が,陰となって黒っぽく見える。円空は,このように,目玉の部分を浮き上がらせ,その横方向の中心線が,稜線を描くように彫刻すれば,目が上下で白と黒のコントラストを形成することを計算し,これによって,目の上半分を「目蓋(まぶた)」,下半分を眼球として描いたのではないか。このように理解することで,「微笑の口」とマッチするように思えるのだが。