北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「医療裁判」を扱う弁護士が,朝方に見る夢

昨日,今日,と連続して,医療裁判につき,裁判所及び病院側代理人とのウエッブ会議があった。

いずれの裁判も,病院側の「術式選択のミス」を主張し,争われている。伝統的な「外科手術」の方は,身体侵襲は大きいが,比較的安全に受けられる。これに対し,「カテーテル手術」の方は,身体侵襲は相対的に低いが,合併症が問題となりうる。どちらを受けるかは,本来は,患者の熟慮に基づく自由な選択・判断にゆだねられるはずであるが,いずれの裁判事件も,患者が,担当医師に勧められるままに「カテーテル手術」を受けたところ,運悪く,術後の合併症によって,亡くなられたケースだ。

夢の中では,何故だか私が,患者家族の立場で,医師の術前説明を受けている。
いや,これにも実は伏線があった。実は,上記医療裁判のうちの一件は,私の父と同じ血管性の病気にからむ事件で,父の場合は,私が患者(父)の家族代表として担当外科医から外科手術について術前説明を受けたが(最近になって,そのときの手術説明書がみつかった。),当時は,カテーテル手術の選択肢はなかった(父のときの手術説明書については,これを上記裁判の証拠に出して,「ホラっ,外科手術を選択しておけば,本件のように『死に至る合併症』は生じなかったではないか!?」と主張する予定。)。

細かい夢の内容は忘れてしまったが,夢の中では,私は,担当医師に対し,「先生,心拍数は大丈夫でしょうか。念のため,測ってみてください。」と頼んでいる。そこで,医師が聴診器のような医療器具を患者に当てて診ると,・・・あら不思議,「ピッ,ピッ,ピッ」と電子音のような音が鳴り響いた。

なんと,鳴っていた電子音は,私の枕元に置いてある「目覚まし時計」であった。

なんで,こんな夢を見たのか?
実は,原因は,仕事だけではなさそうだ。
「眠り」は浅いが,「夢の由縁」は,案外根深い。

実は,昨晩,寝る前に,久しぶりに読んでみたくなって,書棚から取り出して読んだ本が,伊藤比呂美さんの著作「日本ノ霊異(フシギ)ナ話」だった。周知のとおり「日本霊異記」は,摩訶不思議な話を集めた日本最古の仏教説話集(古典)であるが,伊藤比呂美さんの御著は,この古典に取材して,人間の(サガ)と(セイ・クナガヒ)を扱った「エロい」話が集められている。
 そして,その「エロい」話の多くは,登場人物の「夢」として語られているのだ。

では,何故,昨晩,久しぶりに伊藤比呂美さんの「日本ノ霊異(フシギ)ナ話」を読み返す気持ちになったのか? 

実は,最近,読んだ本の中に,「日本霊異記」のことが書かれていたからである。最近は物忘れが激しく,どの本の,どのあたりに「日本霊異記」のことが出てきていたのか,すぐには思い出せない。だが,いろいろ本を探しているうちに,ヤレヤレ見つけ出した。佐藤信(東大名誉教授)編「大学の日本史 教養から考える歴史へ」で次のごとく紹介されていた。

 古代の仏教説話集『日本霊異記』は,白村江の敗戦(註:百済からの救援の要請により,斉明天皇指揮下の日本軍が朝鮮に出兵したが,663年[「ムッ,無残な戦い」と年号を覚える],唐・新羅の連合軍に大敗して,逃げ帰ってきた戦争)から帰国した備後国(広島県)三谷郡・郡司の先祖である地方豪族が,出征の時に「無事に帰国できたら,諸神祇(じんぎ;天の神と,地の神)のために伽藍(寺)を造立する」と誓願していたことを受けて,百済国人(古代朝鮮人)の高僧・弘済(ぐさい)を招いて共に帰郷し,立派な伽藍をもつ三谷寺を建てたという説話(上巻第七)がある。この説話は,当時,地方豪族が造寺できるほど財力を既にもっていたことと,早くから仏教を受容していたことで注目される。そして,この「三谷寺」は,発掘調査の結果,備後寺町廃寺(広島県三次市)であることが判明しており,『日本霊異記』の記載が裏付けられたとのこと。

また,『日本霊異記』の別の説話(上巻第一七)として,伊予国(愛媛県)越智郡の郡司の先祖(越智直)らが白村江の戦いに参戦し,唐国の捕虜になったものの,観音菩薩像への仏教信仰によって無事帰国できたという話が残されている。このことからは,当時,郡司クラスの地方豪族が,外来文化(仏教)の受容に積極的であったことが示されている,とのこと。