北口雅章法律事務所

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「漁船」が「艦船」に激突したらどうなるか?

1.「漁船」が「艦船」に激突したらどうなるか?

    「漁船」が破損し沈没するのが,当たり前。

 

2.では,「漁船」が「艦船」に激突しても,「漁船」が沈没せず,かつ,
    「艦船」の方が破損したとなれば,どのような事態が想定されるか?
   
 2010年9月7日,尖閣諸島付近の日本領海をパトロールしていた
海上保安庁に所属する巡視艇が,
中国籍の不審な「漁船」を発見し日本領海からの退去を命じるも,
当該「漁船」は,退去命令を無視したばかりか,巡視艇2隻に対し,
体当たり攻撃をしかけてきて,当該2隻を破損させる,という事件が起きた。

このため,
海上保安庁は,当該「漁船」の船長を公務執行妨害で逮捕し,
石垣島へ連行し,取調べを行ったうえで,那覇地方検察庁石垣支部に送検した。

 その後同年11月4日,海上保安庁の職員が,YouTube上に流出させた

「衝突時の映像」からも明らかなとおり,

    https://www.youtube.com/watch?v=57Ey6eUoLsE

当該中国人・船長には,公務執行妨害罪

(艦船破壊罪[刑法127条]との観念的競合であろう。)
の成立が明白であったにもかかわらず,
 那覇地検は,中国政府からの圧力に屈し,
「日中関係を考慮」して(おそらく当時の菅直人首相の差し金であろう。),
9月25日,当該船長,処分保留のまま釈放してしまった。
これが,いわゆる「尖閣諸島中国漁船衝突事件」である。

 私は,検察庁が,「確信犯」である当該船長の違法行為に対し毅然とした態度をとらずに,
処分保留のまま釈放することは,「国辱」であり,
刑訴法248条(起訴便宜主義)において,
検察官に認められた訴追裁量権の範囲を逸脱した違法行為である,
と考えるものであるが,
本ブログで問題にしたいのは,当該釈放処分の違法性うんぬんではない。

 ここで問題としたいのは,
中国籍の「漁船」が,軍艦仕様の巡視艇に体当たり攻撃を仕掛けて衝突している
にもかかわらず,中国籍の「漁船」の方は沈没も破損もせず,
海上保安庁所轄の巡視艇の方が破損している,という本来ありうべからざる事態であり,
 また,このような異常事態を前に,検察庁がこれを何ら問題視した形跡がないことである。

 端的にいえば,検察庁としては,
「漁船」とは名ばかりで,
 その実態は尖閣諸島付近の海域の諜報活動をしていた「諜報船」である!
 と疑うべきではなかったのか。

 少なくとも,漁船の乗務員全員を逮捕・勾留して,
その氏名・所属・経歴等の個人情報(「前科」照会にも対応できる情報)を収集し,
船内に情報収集活動を裏付ける通信機器等が積載されていないかどうかを,
くまなく捜索すべきではなかったか。
 もし仮にかかる捜査(情報収集)活動もせずに
(また,たとえ「漁船」だっとしても,漁業法違反の国産・海産物も没収せずに),
船長を含む乗務員を「無傷で」釈放するなどといった那覇地検の採った措置は,
(当然,最高検の決裁を経ているであろうが。),
「アホ!」としかいいようがない。